本業の廃棄物処理は地球環境の保全と背中合わせの仕事だ。地元企業のCO2排出に対する気づきを促し、環境貢献につなげる仕組みをスタートした。

 岡山県倉敷市の郊外、児島地区に本社を構えるNIK環境は、倉敷市、岡山市を中心に岡山県内の廃棄物処理を広く請け負う。産業廃棄物・一般廃棄物の処理に加えてリサイクルにも熱心に取り組んでいる。2017年度の売り上げは約6億円、経常利益は約3000万円で、産業廃棄物と一般廃棄物の比率としては産廃の方が高い。

 地元で、環境保護を積極的に推進する企業としても知られている。2013年、全国の廃棄物処理業者で初めて、事業で排出するCO2を表示するカーボンフットプリント(CFP)の認定を受けた。他者が削減したCO2枠を購入し、カーボンオフセットすることで参加できる「どんぐりポイント」(CO2排出抑制に向け経済産業省が実施する制度)にも同年、中国地方で初めて参加している。

 環境に資する活動に着手したのは2006年のことだ。独自の取り組みとして、廃棄物処理で排出されるCO2を環境省が制定した計算式に基づいて割り出し、処理を委託する事業者にアナウンスする「見える化」の取り組みを開始。これが県に評価され、2007年に「岡山県ストップ温暖化賞」を受賞した。翌年から地球温暖化防止に向けたCO2削減とリサイクル推進の具体的活動をスタートしている。

カーボンオフセットの仕組みを開始

 どんぐりポイントへの参加を契機に、2014年、同社はCO2削減に寄与する取り組みである「SD-1st」(エスディーファースト)を開始した。企業や団体がNIK環境に廃棄物リサイクルを委託すると、同社が購入したCO2排出権でカーボンオフセットされ、委託元のCO2排出はゼロになる。

 これによって委託元にはどんぐりポイントが付与される。このポイントを、倉敷市環境学習センターに寄付すると、地域の子供たちの環境教育に活用される仕組みだ。2015年にはポイントを望遠鏡と交換し、子供たちが野鳥を観察する会を倉敷市と共同で開催した。さらに、ポイントを寄付した企業や団体には倉敷市長の名で感謝状が授与される。

■ 「SD-1st」の流れ
「SD−1st」とは「CFPプログラム」と「どんぐりポイント制度」を活用したSDGs活動

 「感謝状は、いわば自治体首長からCO2削減の取り組みに対するオフィシャルなお墨付きを得たということです。企業としては感謝状を、ESG評価レポートやCSR報告書を通じて社会的なアピールに役立てられます」と、代表取締役の吉田栄一氏は解説する。

 現在、SD-1stには企業と自治体・地元子供会などを合わせた約30の組織が登録。倉敷市内に造船所を有するサノヤス造船(本社・大阪市)も、吉田氏の呼びかけに応じて参加した企業の一つだ。

 SD-1stは同社が独自に企画し、仕掛けたアイデアで、登録を受け付けるウェブサイトの運営も同社で行っている。こうした取り組みが評価され、2014年には岡山市で開催された「ESD(持続可能な開発のための教育)に関する世界会議」で岡山地域のESD重点取組組織の指定を受けた。

 「ここ数年、SDGsやESGというキーワードが海外からやってきましたが、当社としてはもともと取り組んでいた活動なので、特に目新しさは感じませんでした」と吉田氏。SD-1stの取り組みも、本来はあくまで気付きを促すためのものであり、本業とそれほどリンクしている意識はないと吉田氏は強調する。

 とはいえ、産廃処理費は委託する企業側もコストを圧縮したい分野で、実際に価格競争が厳しい業界でもある。その点、NIK環境で処理を行えば、直接的にカーボンオフセットを行うのは同社だが、委託元も間接的にオフセットしていることになり、CO2排出削減を自社の取り組みとして強くアピールできる。

 NIK環境の環境活動は本業の面から考えても、同業他社との差別化を図る上で意義ある取り組みになっている。

 ただ、SD-1stへの参加組織数は開始当初からそれほど伸びていないと吉田氏は話す。

 「地球環境保護への取り組みや、それを含んだSDGsへの対応は、やはり現場ではなく経営層が考えるべきテーマです。仮に現場が興味を持っても、経営層の理解がないと動きはストップしてしまいます。ですから、経営層には自社がCO2を排出していることに危機感を感じ、CO2のオフセットがSDGsの目標達成やESG投資にもつながることを理解していただきたいですね。現場社員もSDGsがどんなものか、そこにどのようなメリットや必要性があるかについて考える機会もなかなかないでしょうから、今後は何らかの形で、SDGsを追求することはカッコいいことなんだという意識が広まっていけばよいと思います」