いすゞ自動車は天然ガス車の開発を加速させる。脱石油依存社会でも安定輸送を支えるため、輸送燃料の多様化を目指す。

 2018年6月、国内で初めて大型LNG(液化天然ガス)トラックの公道走行実験が開始された。環境省のCO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業として、2016年度から取り組まれている「大型LNGトラックおよび最適燃料インフラの開発・実証事業」の一環だ。

 これはLNGを燃料とする長距離走行が可能な大型トラックを開発するとともに、LNGを充填するガススタンドを開設し、運送事業者が実際に公道走行を実施するというものである。

 いすゞ自動車は、人気の大型トラック「ギガ」のLNG仕様車を開発した。まず6月に大阪、9月には東京にLNGスタンドが開設され、東京〜大阪間での輸送が始まった。

 「LNG仕様のギガには容量約300ℓのLNGタンクを2本と、予備として180ℓのCNG(圧縮天然ガス)タンクを2本積んでいる。高速道路で走ると東京〜大阪間の道のりは約550㎞ある。それを優に超える1000㎞以上の距離を走れる。CO2排出量はディーゼル重量車燃費基準比で10%程度低減できる見込みだ。 

■ 日本初の大型LNGトラックによる公道での実証実験がスタート
いすゞ自動車は、大型トラック「ギガ」のLNG仕様車を開発した。2018年6月上旬には、日本初の「L(LNG)+CNGステーション」が開設され、運送事業者によるモニター走行が開始された

 今回の実証実験では、運送事業者に実際の業務にトラックを使ってもらい、その中で効果や実用性を検証する。運輸部門はエネルギー源の約98%を石油が占めている。高い石油依存度を低減させ、部門全体のCO2排出を削減したい」とNGV企画・設計部 チーフ・エンジニアの鹿内和憲氏は語る。

 大型商用車は特に耐久性が求められる。同社は、「10年で100万㎞以上走る」ことを目安にトラックを開発している。その点も検証しながら、課題を洗い出し、さらなる改良につなげたい考えだ。

天然ガス車は国益にかなう

 同社の天然ガストラック開発の歴史は1993年に遡る。

 「天然ガスはメタンを主成分とする可燃性ガスで、単位発熱量当たりのCO2排出量が軽油比で27%低く、環境性に優れている。加えて経済性にも優れる。米国などでシェールガスが採掘されるようになって、今後も原油より低価格で安定して推移するとみられる。

 石油の可採年数が50年ほどといわれるのに対し、天然ガスはシェールガスも含めて200年以上もつと考えられており、石油代替燃料として、極めて現実的な燃料といえる。天然ガスを使うことは、石油依存度の高い日本において国が推進する国土強靭化政策にも資するだろう」(鹿内氏)。

 車両に使う天然ガスにはCNGとLNGの2種類がある。天然ガスを200分の1に圧縮したのがCNG、冷却して液状にしたのがLNGだ。LNGの方が燃料のエネルギー密度が高い分、同じ容量のタンクを積んだ場合、CNG車より長距離を走れる。いすゞ自動車が、まず小型・中型CNGトラックを開発した背景には、CNGのガススタンドが都市ガス配管がある都市部を中心に設置されたことがある。同社はガス事業者と協力し、自治体向けのごみ収集車などから商品化した。その後、CNG車の増加とともにガススタンドの設置も増えていった。

 2000年ごろ、CNG車に追い風が吹く。ディーゼル車の黒煙対策として、CNG車を導入する事業者が増えたのだ。だが、長くは続かなかった。PM(粒子状物質)やNOx(窒素酸化物)の除去技術などの開発が進み、黒煙の心配が軽減され、さらに2008年のリーマンショックの影響を受けてCNG車の需要が減っていった。

 転機となったのは、2011年3月に発生した東日本大震災だった。このころ、イランがホルムズ海峡を封鎖する話が浮上し、世界の原油供給への影響が懸念されたこともあり、エネルギーの多様化が喫緊の課題として急浮上した。CNGトラックを普及させることは国益にかなうはずと、トラックの業界団体を中心に論議が展開されることになる。

 社会の要請が強まってきたことを受け、いすゞ自動車は2015年、大型トラックのギガをベースとしたCNG車を発売した。翌2016年に新モデルを追加し、2017年にはオートマチックマニュアルトランスミッション(AMT)仕様もラインアップに加えている。

 大型CNG車と並行して大型LNGトラックの開発を進めていた折、環境省の大型LNGトラック開発事業の公募があり、手を挙げたというわけだ。