主力分野のプリンティング領域で、イノベーションを起こし続けるエプソン。その取り組みは、顧客の生産性向上にとどまらず、広く社会課題の解決に寄与していく。

 ペーパーレスが叫ばれつつも、オフィスにおいて紙の印刷はまだまだ欠かせない作業だ。もちろん紙には資源の問題がつきまとう上、プリンターや複合機はオフィスの消費電力の10〜15%を占めるといわれ、環境負荷の点はやはり無視できない。

 エプソンは2050年に向けた「環境ビジョン2050」の中で、省エネ・小型・高精度を追求する「省・小・精の価値」の提供により、「なくてはならない会社であり続けたい」と宣言している。

 2050年の目標からバックキャストする形で策定した長期ビジョン「Epson 25」の目指すものが、社会の課題と向き合い、それを解決していくイノベーションの創造だ。

 主力分野であるプリンティング領域でエプソンが起こしているのが「インクジェットイノベーション」である。現在、オフィスではレーザー方式のプリンター・複合機が主流だが、エプソンはあえて、同社のDNAであり強みともいえるインクジェット方式にこだわった。

 従来、インクジェットというと家庭用のイメージが強く、高画質ではあるものの、印刷速度が遅く、かつ消耗品(インク)の交換も頻繁でコストも手間もかかるため、オフィスユースには不向きだと考えられてきた。印刷に時間がかかり、消耗品が増えれば当然ながら環境負荷も高くなる。エプソンはここにイノベーションを導入し、インクジェットの革新を実現した。

インクジェットの技術革新

 2017年6月に発売したオフィス向け複合機「LXシリーズ」では、「省・小・精」の「省」の技術によってレーザー方式の8分の1という圧倒的な低消費電力を実現しつつ、「精」の技術で高画質を保ちながら1分間に100枚の高速プリントを達成している。これは一般的なレーザープリンターの約2倍のスピードだ。「オフィスの印刷はレーザー」という従来の先入観を覆す商品といえる。

 通常、これほどのハイスピード印刷を可能にするには機器全体の大型化が必要だが、そこは「小」の技術が力を発揮した。インクは、大容量カートリッジ採用で交換の手間やコストを削減した。加えて紙詰まりの際に誰でも簡単に取り除ける構造を導入し、ダウンタイムを最小限に抑えて生産性向上や働き方改革に寄与する。

 市場の反応も好評だ。紙の資料を配布する機会の多い教育・医療分野や、チラシを大量に印刷する小売りなどの業界で特に引き合いが強い。とはいえ当初は、やはりユーザー側に「オフィスではレーザー」のイメージが浸透し、需要喚起が難しかった。

 そこでエプソン販売では直販部隊を強化するなど営業体制を見直した。社員が直接出向いてインクジェットの強みをアピールし、実機をデモすることで、その優位性が浸透し始めた実感があるという。

 一方、小規模の店舗・オフィスやSOHO向け、あるいは個人ユーザー向けとして、従来のインクカートリッジ交換スタイルではなく、ボトル詰め替え式の「エコタンク搭載モデル」もリリースしている。

 これまでは、インクの価格が高く、交換も手間だという声が強かった。そこに応え、気兼ねなく大量に印刷してもらうために、インクが減ったらボトルから供給するというスタイルを提案したわけだ。これにより印刷コストは、レーザー方式と比較しておよそ9割カットできる。インク交換の頻度やカートリッジの廃棄自体が減るため、環境保護の観点でも優位性がある。

 エコタンク搭載モデルはもともと2010年にインドネシアで発売を開始し、好評であったため、逆輸入の形で日本では2016年から発売している。かつて「プリンター業界はインクで儲ける」などと揶揄されたこともあったが、同社は単なる利益追求ではなく、ユーザーの声を重視することで、先駆者として大容量インク市場を切り開いたと自負している。

■ 技術革新で社会課題解決に貢献する製品群
写真左は低消費電力、高画質、高速プリントを実現するオフィス向け複合機「LXシリーズ」
写真中央は印刷コスト削減と環境課題に貢献するボトル詰め替え式の「エコタンク搭載モデル」
写真右は環境対応とセキュリティ課題の双方を解決する乾式オフィス製紙機「PaperLab」
[クリックすると拡大した画像が開きます]