温暖化が進む将来、エアコン(空調機)は人々の生活により一層、欠かせないものとなるだろう。一方で電力消費増大やフロンガス問題が懸念される中、ダイキン工業は「環境ビジョン2050」を策定した。

 世界各地で集中豪雨や洪水、熱波による森林火災などが多発し、人々の生活に深刻な影響を及ぼしている。日本でも今夏は記録的猛暑となった。地球温暖化が進む限り、人間はこのような状況と直面し続けなければならないだろう。

 “暑くなる地球”で人類が幸福に暮らすため、エアコンが果たすべき役割はますます大きくなる。エアコンメーカーとして今後どのような社会的価値を提供できるのか。ダイキン工業は未来に向けて事業を再定義すべく、「環境ビジョン2050」を策定し、「サステナビリティレポート2018」に盛り込んだ。

 同社はこの中で「製品」「ソリューション」「空気の力」の3つの軸を設定し、各取り組みのトータルで、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目指している。

■ 「環境ビジョン2050」でCO2排出ゼロを目指す
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ダイキン工業の「環境ビジョン2050」(左)。「製品」と「ソリューション」でCO2排出量を削減し、冷媒の回収・再生などにより「CO2排出ゼロ」を目指す(右)。「空気の力」では、健康的な空気を生み出す技術により、空気の付加価値を追求していく

 「製品」とはエアコンの省エネ化や温暖化への影響が小さい冷媒の開発・普及によりライフサイクルにおけるCO2排出量を削減しようというもの。「ソリューション」は、エネルギーマネジメントによる電力の効率利用や再生可能エネルギーの活用、冷媒の回収・再生などを通じてCO2削減を進める取り組みだ。

 残る一つ、「空気の力」とは何か。同社CSR・地球環境センター室長の藤本悟氏は次のように語る。

 「人々の多くは、人生の9割近くの時間を屋内で過ごしている。当社はエアコンを提供する会社であり、言い換えれば、人々が過ごす空間の“空気の質”をコントロールする、極めて重要な役割を担っている。熱波や大気汚染から人々を守り、安全・安心と健康・快適性を実現しながら、より良い暮らしをサポートする。そのために豊かな空気を提供するという点に、エアコンの、そして当社の社会的価値がある」

機会もリスクも生み出す製品

 高温の環境下では、熱中症により命が脅かされることもある。睡眠障害などを引き起こすともいわれ、昼間は仕事の生産性が上がらず、ひいては産業に悪影響を及ぼす。大気汚染も深刻化しており、2040年には呼吸器系の病気で400万人が死亡するという予測もある。エアコンを提供することで、まずは人々の健康を守り、さらに経済活動にも貢献できるというわけだ。

 一方、エアコンの普及は電力消費の増大につながるため、適切なエネルギーマネジメントによる環境負荷低減が必須となる。フロンガスも2050年には温室効果ガス全体の10%を超す見通しで、抜本的な対策が求められている。

 「2050年を見据え、エアコンメーカーとしての企業価値と責任を再定義するきっかけとなったのが、パリ協定における気候変動対策の『緩和・適応』の考え方、そしてSDGsの登場だった」と藤本氏は語る。当初はSDGsを事業の中でどのように位置付けるかで悩んだが、事業の価値を測る物差しとしてSDGsを活用し、それぞれのゴールに当てはめる作業を実践することにより、事業を通じた環境・社会貢献の方向性が見えてきたという。

 2050年までの社会予測を基にシナリオを作成し、そのリスクと機会の分析に同社の強みを照らし合わせることで、前述の「製品」「ソリューション」「空気の力」という3つの方向性を導き出した。この3つにオープンイノベーションとIoT(モノのインターネット)・AI(人工知能)を活用することで、「CO2排出ゼロ」を実現していく構えだ。

 その根拠も明確に示している。「製品」において同社は長年、高効率エアコンの普及を推進しており、既に電力消費とCO2排出量を大幅に削減している。2017年のインバータ機比率を見ると、日本やオセアニアで100%、欧州で94%と高い数値を達成しており、2008年にわずか7%だった中国でも67%まで伸びている。今後は普及率が低い中南米での取り組みを進めていく考えだ。

 フロンガスについても、温暖化の影響を約7割削減するR32冷媒採用機を世界50カ国以上で1500万台販売するなど、低温暖化冷媒の普及拡大を推し進めている。