聞き手/藤田 香

PRIは、投資家が共同で企業と対話するイニシアティブを発足させている。温室効果ガス排出量が多い企業や、森林伐採企業への共同対話が本格化してきた。

――国連の呼び掛けで始まった「PRI(責任投資原則)」は、署名する投資家にいわばESG投資を求める原則です。PRIに署名する機関投資家は年々増えています。ESG投資が広がってきたということでしょうか。

クリス・ドゥーマ
PRI(責任投資原則) 投資実務・エンゲージメント ディレクター
オランダの運用大手MNで責任投資とガバナンスのディレクターを7年以上務める。受託したオランダと英国の15の年金基金に運用マネジャーとして携わった後、オランダ勅許会計士協会に参加。2015年にPRIに移り、投資実務とエンゲージメントの担当ディレクター。SDGsの取り組みも主導
写真/中島正之

クリス・ドゥーマ氏(以下、敬称略) 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道・最高投資責任者(CIO)が話していたのですが、「アセットオーナーとして運用機関にPRIへの署名を求めている」と。他のアセットオーナーも同様の考えを持っています。こうしたアセットオーナーからの要請もあり、署名機関は1800を超えました。欧州や米国をはじめ、中国を含むアジアの投資家も増えています。日本も60機関が署名しています。

 署名機関は毎年、責任投資活動の年次報告をしなければなりません。ただ、中にはPRIのロゴを「宣伝」に使う機関も出てきました。行動を伴わない投資家がいるという懸念を持つようになりました。

――中にはレベルの低い投資家もいるということですね。それに対してPRIは2018年1月、「最低履行要件」を発表しました。

ドゥーマ そうです。署名機関の「最低履行要件」を発表し、2020年までに3つの要件に従わなければPRIから除名することにしました。

 1つ目は、運用資産総額の50%以上に適用する「ESG投資方針」を定めること。2つ目は、署名機関の取締役会がこのプロセスに合意していること。3つ目は責任投資を行動に結び付けることです。機関投資家が方針を立て、スタッフを動員し、確実に責任投資を行うことを求めます。PRIへの署名が宣伝だけに終わってはいけないからです。実行が難しい投資家にはPRIが支援します。

 もちろん、投資家はそれぞれ多様な投資方針を持っています。企業価値の向上に高い関心を持って投資判断をする投資家もいれば、財務リスクを大きく考慮する投資家もいるでしょう。社会への貢献や還元を重視して企業を評価する投資家もいます。そうした多様な考え方はあってよいと考えています。