中川 優/日本能率協会 審査・検証センター マーケティング系 エキスパート

企業でSDGsを実践するための効果的な方法を紹介する。環境マネジメントシステム規格「ISO14001」の出番だ。

 企業でSDGs(持続可能な開発目標)の関心が高まっている。SDGsが示す17目標の中で自社が取り込めそうなテーマを探索し、既存の事業が17目標のどれに当てはまるのかを公表する企業が増えてきた。

 ただ、こうした「紐付け」のためだけのSDGsではもったいない。SDGsの企業行動指針「SDGコンパス」(詳しくは後述)では、「新たな事業成長の機会を見いだし、リスク全体を下げる」と説明されている。

 SDGsは本業と関係の薄い社会貢献活動を推奨しているわけではなく、ビジネスチャンスを見極めるツールとして利用できるのだ。

ISO担当者のノウハウを使う

 とはいえ、SDGsを本業の活動に組み込み、実際に運用し、パフォーマンスを上げていくための決められた手順や方法は存在しない。そのため、紐付けの後、どのように運用すればいいか悩んでいる企業が多いのではないだろうか。

 筆者は、環境マネジメントシステム規格「ISO14001」に関する企業向けの研修や審査を20年近く担当してきた。この経験から感じるのは、2015年9月に改訂された最新版のISO14001は、SDGsを実践するのに大いに活用できるということだ。企業でSDGsを進める「駆動部」にISO14001を活用することで、SDGsに関するPDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルが自然に回る。つまり、改訂版ISO14001を運用している企業にとってみれば、SDGsの運用は難しくない。

 現在、SDGsに関心を持つ多くの企業がISO14001を取得している。ただ、SDGsとISO14001を別物として扱い、担当部署も異なっているケースが多い。企業のSDGs推進部署が自社のISO14001担当部署と連携することで、ISO14001担当者が持つ知識やマネジメントのノウハウを活用でき、SDGsの効率的かつ実効的な運用が可能となる。ISO14001のマネジメントシステムを使ってSDGsを「回す」ためのコツを紹介しよう。

■ SDGsの運用に環境マネジメントシステムを使う
SDGs(持続可能な開発目標)と環境マネジメントシステム「ISO14001」は共に「持続可能性」を目的としており相性が良い。SDGsの運用にISO14001が使える
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 そもそも、SDGsとISO14001は相性が良い。

 ISO14001は「環境マネジメントシステム」であり、環境に関する規格と認識している人は多いだろう。しかし、規格書の序文には「持続可能性の“環境の柱”に寄与する」とあり、実は「持続可能な開発」を目的としている。

 最新規格である2015年版のISO14001では、企業の社会的責任を記した規格「ISO26000」と整合させた。ISO14001規格にある「環境」という用語を「社会」や「CSR」と読み替えても違和感がない。

 一方、SDGsの企業行動指針である「SDGコンパス」は、GRI(グローバル・リポーティング・イニシアティブ)、国連グローバル・コンパクト、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)の3者が共同で作成したものだ。WBCSDは、世界約200社のトップの連合体であり、前身となったBCSD(持続可能な発展のための経済人会議)は、1991年にISO14001の規格化を提案した主体である。

 つまり、社会の持続可能性を追求するための世界標準という点では、SDGsもISO14001も同じなのである。