「構造化チャート」を活用

 ISO14001の構造のどこにSDGsの要素を入れ込んでいけばよいのかを、より具体的に見ていこう。ISO14001の規格に沿って解説するのでSDGs担当者には難しく感じるかもしれないが、ISO14001担当者には、より実務に直結した具体的な解説になると思う。

 ISO14001の項目ごとの関係や運用の流れを記した「ISO14001構造化チャート」を用意した(下図)。ここに、環境の取り組みだけでなく、SDGsの内容も記載していくと、即席の「SDGs運用マップ」が出来上がる。SDGコンパスが示すステップとの対応も示してある。

■ 「ISO14001構造化チャート」にSDGsの要素(赤字の部分)を入れた例
注: 「ステップ1~5」は、SDGコンパスのステップ
[クリックすると拡大した画像が開きます]

 「戦略ゾーン」は、外部の課題と利害関係者のニーズを基に、リスクと機会を特定する部分である。

 「外部の課題」欄には、自社の事業に整合するSDGsの17目標を記入すればよい。ISO14001では「4.1 組織及びその状況の理解」において「外部及び内部の課題を決定しなければならない」とある。ここでの「外部及び内部の課題」は、環境課題のことではなく、中期経営計画や経営トップの念頭表明などで示される経営課題である。経営課題をSDGsの視点で広く捉えてみるわけだ。

■ SDGsの社会課題からリスクと機会を特定
[クリックすると拡大した画像が開きます]

 「利害関係者のニーズ及び期待」は、SDGsで述べられている社会の要請や目標と考えればよい。利害関係者というのは、顧客、株主、行政、取引先、地域住民、従業員などである。これらの主体は総じて「社会」と捉えることができる。社会の要請に耳を澄ますことが、新たなビジネスを生み出す第一歩となる。

目標設定にターゲット活用

 「計画ゾーン」は、SDGコンパスで優先課題を決めるステップである。「リスク及び機会」「著しい環境側面」「順守義務」の3点を計画する部分で、「6.1.4 取組みの計画策定」で規定されている。この部分は、改訂版ISO14001で追加された最も特徴的な部分である。従来は、「著しい環境側面」と「順守義務」が決まれば環境目標が決まった。改訂版ISO14001では、これらに「リスク及び機会」を加えた3つから環境目標を定め、運用に落とし込んでいく流れになる。

 「リスク及び機会」の決定は、上場企業なら有価証券報告書「事業等のリスク」などから持ってくるのが一般的だろう。SDGコンパスではより具体的に、事業のバリューチェーンのどこに正の影響と負の影響があるかを確認する方法を紹介している。脅威(マイナス影響)よりも機会(プラス影響)を強調して記載することがポイントである。

 また、「リスク及び機会」は経営トップがトップダウンで決め、「著しい環境側面」は各部門から集めた環境側面をボトムアップで決める。「順守義務」は、法規制だけではなく社会要請を含めて広く考えるのがコツである。

 注意したいのは、この段階で有効性の評価方法を考える必要があることだ。その取り組みは何を持って有効とするのかというKPIを定めておく必要がある。KPIは、SDGsの169のターゲットや230の評価指標を参考にすればよい。

■ SDGsのターゲットを参考に目標を設定する

 例えば、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」では、「2030年までに再エネの割合を大幅に拡大」というターゲットや、「最終エネルギー消費量に占める再エネの比率」といった評価指標がある。世界全体の目標を踏まえ、自社における重要性(マテリアリティ)を考慮して目標を検討すればよいだろう。先の「評価ゾーン」では、ここで示したKPIを測定し、そのパフォーマンスを分析・評価することになる。

 「目標ゾーン」では、これまでの作業を踏まえ、具体的な目標を決める。「6.2.1 環境目標」では、環境目標は環境方針と整合しており、測定可能であることを求めている。環境方針は、トップマネジメント(経営トップ)がコミットメントする必要がある。

 運用の起点となるのは経営トップだ。リーダーシップに関する「5.2 環境方針」では、以前は「環境影響に適切」な環境方針が求められていたが、改訂版では「組織の状況に適切」なトップマネジメントが求められるようになった。「組織の状況」とは、「戦略ゾーン」で検討した「組織及びその状況の理解」「利害関係者のニーズ及び期待の理解」を含むもので、「SDGs対応にも適切」な環境方針と解釈すればよい。

■ 運用は経営トップが起点
[クリックすると拡大した画像が開きます]