聞き手/馬場 未希

ESG投資家の関心は気候変動にとどまらず、SDGsに広がっている。SDGsへの貢献に挑む企業に対する注文を尋ねた。

――国連が提唱してつくられた「責任投資原則(PRI)」には現在、世界のアセットオーナー(資産保有者)やインベストメントマネジャー(資産運用会社)、サービスプロバイダー(評価機関や格付け会社など)といった約2000に及ぶ、長期的な視点に立った環境や社会に対する責任ある投資を実施する投資関係者が署名しています。

 そのPRIが、2015年に国連がまとめた「SDGs(持続可能な開発目標)」に貢献する投資に関する事例集をまとめた理由を聞かせてください。

マーティン・スキャンケ
2014年4月からPRI議長を務める。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)には金融業界代表の1人として参加した。ノルウェー経済の気候関連リスクを特定する政府委員会議長などを歴任。かつてはノルウェー財務省の副局長などマクロ経済政策に10年以上携わった。同国首相の経済政策問題担当チーフアドバイザーを務めたほか、財務省の資産運用部門を立ち上げ、約1兆ドルの資産を保有するノルウェー政府年金基金の管理を担当した。2010~11年には世界経済フォーラムにおいて、「公共・機関投資家向け産業アジェンダ委員会」の議長を務めた(写真:中島正之)

マーティン・スキャンケ氏(以下、敬称略) SDGsは国連に加盟する200近くの国の政策的な意図を示すものです。PRIには2つの国連機関(国連環境計画・金融イニシアティブと国連グローバル・コンパクト)が賛同しており、我々は17目標の達成に向けた取り組みを支持しています。

 ところが、SDGsの達成に必要な資金は、国連や各国政府など公共の資金だけでは賄えません。国連貿易開発会議(UNCTAD)によれば、2030年までに世界で年間5兆〜7兆ドルの投資が必要で、そのうち途上国において必要な投資額は年間3兆3000億〜4兆5000億ドルに達する見込みです。一方で、各国政府の拠出できる資金は年間1兆ドルと見込まれます。民間による投資と金融が不可欠です。

 投資家がSDGsに注目し、取り組むべき2つのポイントがあります。

 第1に、SDGsは投資家に対し、投資機会を提供します。投資家は、SDGsを巡ってどのような投資機会があるかや、どのような投資行動が有効かを理解する必要があります。

 第2に、SDGsに関連する投資は、他の投資にはない利点があります。単に収益を得るだけでなく、世界の課題解決に貢献できます。PRIに署名する投資家らは、受益者などのクライアントに対し、託された資金が持続可能な社会の構築に投じられていることを明確に説明できるようになります。

 PRIは投資家に対し、SDGsの17目標や169ゴールについて理解を促し、投資によってどのような社会の構築に貢献できるか理解を深めるため、他の投資家による事例を共有するなどの取り組みを進めています。

――SDGsに関わるどのような投資が求められているのでしょうか。

スキャンケ 直接的な投資が求められているのは、電力や交通などのインフラ構築、食品の安全性確保や農業、気候変動の緩和(温室効果ガスの削減)と適応(異常気象などから国土や生活、産業を守ること)、生態系の保全、人々の健康、教育の向上といった取り組みへの投資です。幅広い課題に投資することで、世界の持続可能な発展に貢献しながら、長期的な収益を得ていくのです。

 企業は、持続可能な事業や製品、サービスの提供に移行することでESG投資家から資金を呼び込めます。