SDGs失敗のリスクも見よ

――投資家がSDGsの推進に取り組んだ事例を教えてください。

スキャンケ 投資家は株主としての権利を積極的に活用し、投資先企業との対話(エンゲージメント)なども行っています。

■ PRI署名機関投資家によるSDGs事例
出所:マーティン・スキャンケ氏の資料
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 SDGsなど社会課題のなかでも代表的なテーマである気候変動を例にお話ししましょう。今、投資家や金融市場は、投融資の対象となる企業が将来、気候変動や低炭素社会への移行によってどのような影響を受けるかに関心を持っています。そのため、企業には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」がまとめた「提言」に基づく情報開示が求められます。10年や20年、そして40年後に世界の気候が変わったときどのようなビジネスモデルで収益を上げているのか、主要なエネルギーが化石燃料から再生可能エネルギーへと移行した場合に収益にどのような影響が及ぶかを知りたいのです。

 SDGsでも、実は同じことが言えます。例えば世界中で貧困がなくなり、安全な水が供給され、飢餓を解決したとき、どのようなビジネスモデルで収益を出すのかにも注目しています。こうした情報開示を、投資家は求めるようになるでしょう。

――企業はSDGsの目標達成に貢献するための事業展開を進めています。SDGsの目標年である2030年より先の社会課題への貢献やリスク・機会にまでは関心が及んでいません。

スキャンケ 世界でSDGsの目標達成に成功したときにビジネスモデルはどうなるか、どのように収益を確保するのかを検討してほしいですね。

 同様に、SDGsの達成に失敗した社会におけるリスクや機会にも関心があります。今は投資家の関心が、気候変動からSDGsにまで広がっています。SDGsも、達成できなければ気候変動のようなリスクをもたらし得ます。

 SDGsの失敗はすべての国で財政や政策上のリスクも生じかねず、すべての業種に影響が及びます。投資家は、SDGsの成否の影響を被ります。幅広い地域やアセットに投資する投資家ならなおさらのことです。

――企業経営者のリーダーシップが不可欠です。エンゲージメントや報告書などを通じた開示が必要になりますか。

■ SDGs目標ごとのエンゲージメント数
PRIが署名機関投資家を対象に調査した

出所:PRI「Collaboration Platform 2006-2017」
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スキャンケ PRIは投資家と連携する組織です。まずは投資家のSDGsに対する認知と意識を高めます。そして企業にも、SDGsは大きなビジネス上のチャンスであり、無視できない課題であると伝えたいと思います。

 投資家は企業が取り組むべきESG課題でも気候変動に注目しています。投融資を検討している企業の気候変動への取り組みが不十分と分かれば、投資家はその企業の将来に懸念を抱くようになります。

 TCFDに基づく情報開示と同様に、企業が発行する報告書での開示を期待しています。企業が描く将来のシナリオにおいて企業がどのようなリスクや機会に直面し、どのような影響が財務に及ぶか、そしてどのように対処するかを分析し、開示することです。また投資家は、企業とのエンゲージメントを通じて、分析をより充実した内容に高めるように促すことになります。