――6つの資本の中で、人的資本や自然資本をどう表現したらよいか悩むという声を聞きます。

ホヴィット 人的資本は「隠れた資本」と呼ばれています。社員のエンゲージメント(愛着心)、退職率、研修の回数など人的資本を測る指標は複数あります。ただ、それが企業の価値創造にどの程度インパクトを与えるのか、関係性ははっきり分かっていません。人事の施策が企業戦略に統合されていないのが現実です。

 女性活躍の施策が投資に結び付いたという発表もありましたが、信ぴょう性があるかは分かりません。ただ、投資家が価値創造の評価に人的資本を使うようになってきたのは事実で、意義があります。統合報告書を作成して数年になるオムロンは、非財務情報の指標と連動した役員報酬を適用し、社内でうまく機能していると話しています。こうしたケースが日本企業でも出てきています。

 自然資本については2010年に発表された「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」報告書が示したように、資本を測る指標がいくつか存在します。投資家の意思決定に使われているものもいくつかあります。

――今後、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づいた情報開示が統合報告書の中でも求められるようになりますか。

ホヴィット TCFDの提言によって気候変動は財務的なインパクトを及ぼすものだという位置付けになりました。これは大きな変革です。財務でも非財務でも、TCFDの提言に基づく開示を企業の既存の報告フレームワークと一貫性を持たせることが既に合意されています。今後、企業報告の中に統合思考が広まるとともに、TCFDの提言に基づく情報開示が急速に進むでしょう。

国際統合報告評議会(IIRC) CEO リチャード・ホヴィット氏(写真:中島正之)