半澤 智

株主総会で株主が経営陣に次々とガバナンス改革を迫った。「投資機会」と捉えた機関投資家は、対話や議決権行使で企業に迫る。

 「東芝は早くからガバナンスに取り組んできたはず。社外取締役も取締役会の過半数を占めながら不正会計を防げなかった。社外取締役は一体何をしているのか」

 東芝が2018年6月27日に開催した株主総会。質疑応答も終盤に差し掛かり、そろそろ議決に入ろうかという時間帯で、株主の1人が声を上げた。

 一刻も早く経営再建を図りたい同社は、2018年の株主総会は周到な準備で臨んでいた。今後5年間の再生計画「東芝Nextプラン」を車谷暢昭会長が入念に説明し、さらに7000億円規模の自社株買いを含めた株主還元策を発表した。会場は期待ムードに包まれつつあった。

 こうしたなかでのガバナンスに関する株主質問に、会場の雰囲気は一転して緊張感に包まれた。

賛成率で経営を評価

 回答に立ったのは、社外取締役で取締役会議長の小林善光氏である。「叱責を受けたような気がするが、緊張感がないということは決してない。ガバナンスの形式は整えたが実質が伴っていなかったということだ。今後も業務監督に加え、企業ブランド向上、ポートフォリオ管理などを通じて再生計画に貢献していく」と答えた。

 取締役選任決議案は賛成多数で可決された。しかし、2日後の6月29日に公表された賛成率に衝撃が走った。車谷会長選任の賛成比率が63%という異例の低さだったからだ。社外取締役の賛成比率も大きく下がった。取締役会議長の小林喜光氏は74%台、指名委員会委員長を務める池田弘一氏は72%台にとどまった。いずれも2017年秋の臨時株主総会に比べて約20ポイントも低下した。

 賛成率の低さは、ガバナンスに目を光らせる株主の疑念を表している。経営トップや取締役といったガバナンスの中核が、賛成率という数値で評価される時代がやってきた。

コード改訂が投資の絶好機

 東芝だけではない。2018年6月に各社が開催した株主総会では、株主が経営陣に、「4月に就任した社長の選任理由を教えてほしい」(みずほフィナンシャルグループ)、「取締役会のダイバーシティーはどう確保するのか」(三菱重工業)など、ガバナンス改革を迫った。

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 背景にあるのが、6月1日に改訂されたコーポレートガバナンス・コードだ。金融庁と日本取引所グループは、企業に対して2018年中に改訂コードを踏まえたコーポレートガバナンス報告書の提出を求めている。

 経営陣を揺さぶるのは、もはや一部のアクティビスト(物言う株主)だけではない。個人株主や国、これまで安定株主と見られてきた機関投資家なども、企業にガバナンス改革を迫っている。もはやすべての株主がアクティビストだ。