経営者育成に落とし穴

 株主総会は、主に個人株主を対象にした言わば「表舞台」である。実際は、資産運用会社やアクティビストファンド、インデックス運用会社などの機関投資家が、企業との1対1の対話(エンゲージメント)という「裏舞台」でガバナンス改革を迫っている。日本企業のガバナンスを注視する機関投資家を見てみよう。

 欧州最大の資産運用会社である仏アムンディ・アセットマネジメントの子会社であるアムンディ・ジャパンの藤田泰介ディレクターは、「ガバナンス改革による日本企業の伸びしろに注目している」と話す。アムンディの資産運用残高は約190兆円で、そのうち22兆円以上をESG投資などの責任投資として運用しており、世界で先行してESG投資に取り組んできた。

 ESG投資は長期視点で投資を判断する。その際、藤田ディレクターが注目するのが、次の社長を選ぶプロセスである。「経営者との対話でよく話題に上るが、できる経営者ほど自分がいるから大丈夫と思いがち」と話す。明確な後継者育成計画(サクセッションプラン)を持つ日本企業は少ない。

 「ガバナンスを含むESGの取り組みは、短期的な株価上昇にもつながる」と語るのは、ストラテジックキャピタルの丸木強社長だ。丸木社長は村上ファンド出身で国内アクティビストファンドの第一人者。これまで様々な企業に対して、政策保有株の売却や、利益剰余金の株主還元などを迫ってきた。

 丸木社長は、実効性あるガバナンス改革と、情報開示を適時に実施することで、投資家が見積もるリスクを下げられるとみている。これが株価の上昇につながる。

 丸木社長が注目するのは、社外取締役である。「社外取締役は少数株主の代表に他ならない。この役割を分かっていない社外取締役が多い」と指摘する。経営者だけでなく、社外取締役との1対1の対話も重視しているという。

「恒久的株主」はリスク注視

 機関投資家として存在感を増しているのが、米ブラックロック、米バンガード、米ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズなどの大手インデックス運用会社である。

 インデックス運用は、複数の企業に分散投資し、特定指数に連動する運用成績を目指す投資手法である。インデックス運用を使った金融商品である上場投資信託(ETF)の世界の運用資産残高は4兆9690億ドル(542兆円)に上り、多くの米国大型株で大手3社が株式の2〜3割を握っていると言われている。インデックス運用会社は、金融商品が存在し続ける限り企業の株式を持ち続ける「恒久的株主」といえる。

 バンガードのグレン・ボーラム氏は、「形式的なガバナンスは業績につながらない。それは業績を長期的に見れば明らかになる。我々には企業と長期的に対話をする覚悟がある」と話す。形式的なガバナンスと判断すれば、対話や議決権行使という手法を駆使してプレッシャーをかけていく。

 同社が注目するのは、企業のリスク対策だ。取締役会がリスクを監視できているかや、リスクに対してどのように対応しようとしているのかを念入りに問いただすという。