聞き手/酒井 綱一郎(日経BP社取締役副社長)

最先端テクノロジーを駆使し、社会課題解決への貢献を目指す富士通。SDGsを目標にした国連との共同プロジェクトにも取り組んでいる。

――ESG、SDGsを企業戦略の中でどのように位置づけていますか。

佐々木 伸彦(ささき・のぶひこ)
富士通 執行役員副会長
1955年生まれ。1979年東京大学法学部卒業、通商産業省(現・経済産業省)入省。2010年通商政策局長、2012年経済産業審議官。2015年9月富士通顧問に就任。執行役員専務/CSOを経て、2018年4月より現職。

佐々木 伸彦氏(以下、敬称略) 富士通は「テクノロジーで人を幸せにすること」を目指して仕事をしていますが、これは技術によって社会課題の解決に貢献したいということです。SDGsは、社会課題の解決には企業の力が必要だという国連からのメッセージ。当社の思いとSDGsの企業を呼び寄せる力、その2つの同心円が重なりつつあるのが現在の状況だと考えます。

 企業は本来利益を上げることで社会に貢献していくものですが、いまはSDGsをいかに事業の中核に取り込めるかが勝負の分かれ目になります。同心円の重なりが大きくなるほど、ビジネス活動として利益を追求しつつ、社会課題解決への貢献も効果的に進んでいくと思います。

――テクノロジーで社会課題の解決にどう貢献していけるのでしょうか。

佐々木 いまはAI、IoT、クラウドといったICT(情報通信技術)により社会が激しく変化しつつあります。ビジネス活動においてもデジタルトランスフォーメーション、すなわちデジタル技術が企業の本業を変革する時代を迎えています。

 当社はそうした技術を持っている側ですから、その技術でお客様のデータを可視化・分析し、新たな価値に変えていくパートナーとなり得ます。そしてお客様の本業を大きくしていくことで、社会に貢献していきたいと考えています。

――具体的にSDGsを意識して始めたビジネスがありますか。

佐々木 2つご紹介しましょう。1つは2017年3月に国連開発計画(UNDP)、東北大学と共同で始めた災害統計のグローバルデータベースの構築プロジェクトです。途上国の自然災害をデータベースに蓄積・解析し、次に同様の災害が発生した際の政策や避難計画策定に役立てようというものです。当社は基盤となるクラウドの提供に加え、データベース構築作業を支援しています。まずはインドネシアからスタートしますが、今後はUNDPの力も借りてASEANや他地域の途上国にも広げていければと考えています。

■ 災害統計グローバルデータベース構築プロジェクト
国連開発計画(UNDP)と東北大学・災害科学国際研究所が設置した災害統計グローバルセンター(GCDS)に対し、グローバルデータベースの設計・構築支援を行う。UNDPに対しては、データの可視化・分析などを通じた各国の防災行政能力の向上などのデータベース活用に向けた支援を実施。世界で年間56兆円に上るともいわれる自然災害に伴う損害の削減に取り組む
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 もう1つは2017年9月、世界知的所有権機関(WIPO)が運営する環境技術の移転マッチングの枠組み「WIPO GREEN」にパートナーとして参画したことです。当社は省エネ・省資源などに役立つ知的財産410件を登録し、その普及と活用による国際貢献を目指しています。

 例えば高効率の小型ACアダプターや、レアメタルの一つであるコバルトを使わない二次電池用正極材料などがありますが、こうした技術をSDGsの各目標達成に向け広く使っていただければと考えています。日本では、現在この取り組みにパートナーとして参画しているのは当社を含めて2社しかありません。