聞き手/酒井 綱一郎(日経BP社取締役副社長)

2041年の創業350周年に向けて木造超高層ビル構想「W350計画」を打ち出した。木材を生かし街を森にかえる環境木化都市の実現を目指す。

――地上70階建て、高さ350mの木造超高層ビルを2041年までに実現する「W350計画」を発表しました。この計画の概要と重要性を、SDGsの観点から教えてください。

市川 晃(いちかわ・あきら)
住友林業 代表取締役 執行役員社長
1954年生まれ。78年住友林業に入社。2007年執行役員 経営企画部長、08年取締役 常務執行役員 経営企画・総務・人事・財務・情報システム・内部監査担当、09年取締役 常務執行役員 経営企画・総務・コーポレート・コミュニケーション・人事・財務・情報システム・内部監査担当などを経て、10年4月より現職

市川 晃 氏(以下、敬称略) 戦後の木材需要増加で全国の山に大規模な植林が行われましたが、70年経った現在、住宅以外では日本の伝統である木造建築物が減り、育った木を使う機会がどんどん減っています。そのような状況を受けて、国は2010年に公共建築物における木材利用を促進する法律を作り、規模の大きな建築物を木造に変えていこうという動きが出てきました。当社もその前後から非住宅分野での木造建築推進の取り組みを進め、2011年には建築物の木造化・木質化を目指す木化推進室(現木化推進部)を新設しました。その流れの中で、高層建築物の木造化・木質化と街を森にかえる環境木化都市の実現を目指し、創業350周年を迎える2041年に向けたW350計画を発表しました。これは当社が目指す一つのコンセプトであるとともに、地球環境に貢献するシンボル的存在だという意識もあります。

――環境木化都市の中では、生物多様性も意識されているのでしょうか。

市川 建物の周りに緑を整備し、都市全体をあたかも森のように変えていくことで、生き物にとっても棲みやすい街づくりを念頭に置いています。2016年に完成した分譲住宅地「フォレストガーデン秦野」(神奈川県秦野市)も、元からある水環境を生かし、自然との共生を重視した街として、次世代につながる資産を提供できたと考えています。

――W350計画の実現には木を活用するための環境整備も必要です。

市川 日本の山は木材を安定的に供給できる仕組みになっていません。コスト競争力を保ちながら伐採するために、まずは山をサステナブルな形に整備することが必要です。そのためには川上(森林)から川下(建築)までが循環する形を整備することが必要です。今、山づくりや製材、流通、技術開発など多様な分野からコンタクトがあり、まさに形になろうとしています。W350計画の実現に向けては、高さ350mの建物を作るより前に、100m、200mなどの高層建築を実現し、皆様と知識を共有することで、経験を積み上げていこうと考えています。

■ 木造超高層建築の開発構想「W350計画」
2018年に会社設立70周年を迎えた住友林業。これを節目に、1691(元禄4)年の創業から350周年を迎える2041年を目標に高さ350mの木造超高層建築物を実現する構想「W350計画」を発表した。この計画を建築構法、環境配慮技術、使用部材の開発など、未来技術へのロードマップとし、木造建築物の可能性を広げ、高層建築物の木造化・木質化と街を森に変える環境木化都市の実現を目指すという