聞き手/酒井 綱一郎 (日経BP社取締役副社長)

2050年の未来を見据えて環境ビジョンを刷新したアサヒグループホールディングス。“自然の恵み”をもとに成り立つ企業として、事業を通じた環境・価値の向上に取り組む。

――企業戦略の中で、ESG、SDGsをどのように位置づけていますか?

小路 明善(こうじ あきよし)
アサヒグループホールディングス 代表取締役社長 兼 CEO
1951年生まれ。1975年青山学院大学卒業後、朝日麦酒(現アサヒビール)入社。2016年アサヒグループホールディングス代表取締役社長兼 COO、2018年より代表取締役社長兼 CEO。(写真:川田 雅宏)

小路 明善 氏(以下、敬称略) ESGやSDGsの取り組みは、企業の持続的な成長に向けた価値創造プロセスを支える戦略の一つだと位置づけています。昨今は、企業理念を起点として戦略やビジネスモデル、ガバナンスについての説明が求められるようになっていると感じます。アサヒグループも新しい経営理念として「Asahi Group Philosophy」を制定し、2019年1月から施行しています。この中では、私たちのミッションとして「期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造」を打ち出し、ステークホルダーにお約束する行動指針の一つに「事業を通じた持続可能な社会への貢献」を掲げています。

――「Asahi Group Philosophy」では、ビジョンとして「グローカルな価値創造企業」を目指し、実現するバリューに「挑戦と革新 最高の品質 感動の共有」を挙げています。これらの意味するところを教えてください。

小路 まずグローカルというのは、グローバルの視点で戦略や方針を考え、その中から、例えば日本や欧州といった各エリアの具体的なローカル戦略に落とし込んでいくということです。従来はローカルのエリア内で戦略を考えて戦術に落とし込んでいましたが、すべてをグローバル視点で考えることから始めよう、という意味合いを持たせました。

 いま世界のグループ全体で約2万8000人の社員がおり、その半数以上が外国籍です。売上収益の3割、事業利益の4割が海外ですから、グループとして国際的に取り組み、ミッションを達成していくための指針として、ビジョンを設定しました。

 バリューの中に、「感動の共有」があります。これは、期待を超えるおいしい商品をご提供することによって、お客様を含めたすべてのステークホルダーと感動を共有しようという価値観を表しています。例えば「アサヒスーパードライ」では氷点下2度で提供する「エクストラコールド」という商品も出しています。

 お客様は漠然と、「もっともっとおいしいビールを」と望んでいらっしゃると思いますが、そのお客様もまさか氷点下のビールが出てくるとは考えていなかったでしょう。そこで氷点下のビールを出すことで、お客様の潜在ニーズを具現化し、期待を超えた商品をご提供して感動を生むことができる。その感動をステークホルダーとも共有し、商品開発やサービスに活かしていこうという思いがあります。