聞き手/酒井 綱一郎(日経BP社取締役副社長)

石油の需要増が見込めぬ中、将来の「あるべき姿」を想定し事業戦略を策定した昭和シェル石油。新しい太陽電池や人工光合成、バイオ燃料など新分野にも乗り出している。

――2030年の事業環境を想定し、そこから遡るバックキャスティングの手法で2017〜21年度の中期事業戦略を策定されました。具体的にどのような事業環境を想定し、なぜバックキャスティングを採用したのでしょうか。

亀岡 剛(かめおか・つよし)
昭和シェル石油 代表取締役社長執行役員 CEO
関西学院大学卒。1979年に入社後、国内燃料油販売部門や人事部門、製品貿易部門に加え、英国のシェル・インターナショナルにて石油製品売買にも携わる。2009年常務執行役員(販売部門全般担当)就任。2013年石油事業COO就任。2015年代表取締役社長グループCEO就任。2018年3月より現職

亀岡 剛氏(以下、敬称略) 想定したのは、「事業・社会環境の構造的変化」「技術革新がもたらす非連続な変化」「環境問題対策への社会的要請の高まり」の3つでした。

 日本の石油需要は右肩下がりですから、フォアキャスティングで臨むと需要が下がり続けるリスクへの対応にとらわれがちです。一方で、アジアの新興国はこれからも需要が伸びていきますし、AI、自動運転など様々な技術革新による変化や環境問題の要請の高まりに対応することも必要です。

 そこで、私たちの資産である全国のサービスステーション(SS)に、2030年に車がどんどんと入ってくる状況をつくることを目標とし、そのために今やるべきことを考えれば、イノベーティブな発想が出てくるだろうと考えました。将来を見据えたバックキャスティングの方法によって「私たちのエネルギーで未来を元気にします」という経営理念を実現するために策定したのが、今回の中期事業戦略です。

――その戦略の軸となる重点領域を決定する際に、SDGsを活用したそうですね。

亀岡 2017年12月に「SDGs部門横断チーム」を立ち上げ、各部門の代表者に、部門を超えて取り組み内容やその課題などを相互指摘したことが効果的でした。さらに、同チームが作成した案をもとに執行役員がSDGsの考え方を活用しながら議論を重ね、「石油の事業効率化と価値最大化」「再生可能エネルギーの普及促進」「新規事業領域の開拓」「ゴールゼロ〜安全操業の徹底〜」「パートナーシップのさらなる深化」「ダイバーシティとインクルーシブネス(D&I)の推進」という6つの重点領域を最終決定しました。

■ 昭和シェル石油グループの6つの重点領域
「SDGs部門横断チーム」が作成した重点領域案に基づき、執行役員がディスカッションを行い、「6つの重点領域」を最終決定した