聞き手/望月 洋介(日経BP総研 所長)

鉄鋼事業に軸足を置きつつ商社として独自の立ち位置を築いている阪和興業。新中期経営計画にESG経営の内容も盛り込み、長期的な企業価値の向上を目指している。

――2016年度にスタートした中期経営計画の最終年度(18年度)の経常利益目標を、早くも初年度で達成。そこで中計の期間を19年度まで延長し、利益目標も大幅に上方修正しました。

中川洋一(なかがわ・よういち)
1961年生まれ。1986年中央大学経済学部卒業後、阪和興業入社。87年東京本社国際財務課に配属。91年、HAMCO(ニューヨーク事務所)出向。2004年、関連事業課長に就任。09年経理部長就任。15年取締役執行役員就任。17年より現職

中川洋一氏(以下、敬称略) “新”中計では、サステナブル経営に向けた「Sへのこだわり〜STEADY、SPEEDY、STRATEGIC〜」という基本テーマは継承しつつ、新たに柱の一つとして「ESG経営を意識したCSR活動の充実」を打ち出しています。商社の特性上、日々の本業の様々な取り組みが、結果的にESGやSDGsに結びついていることが多々あります。無理なく本末転倒にならない範囲で、ESGやSDGsをうまく経営に落とし込んでいきたいと考えています。

 例えば、日々の業務活動の中で行う「HKQC(Hanwa Knowledge Quality Control)」という取り組みがあります。これはメーカー的なQCの考え方を商社に取り入れ、業務で無駄をなくし効率化することで、ミスの防止やエネルギー節約、ひいては業績と企業価値の向上を目指すものです。総合職、一般職、派遣を含めて全社員が参加し、属人的で無駄な業務はないか、ナレッジが引き継がれているかなど業務フローを徹底的に見直します。

――HKQCの取り組みは、ESGのGに結びつくものといえますね。CSR活動の充実という視点で、ESGやSDGsを企業戦略の中にどう位置づけていますか。

中川 今、大手総合商社では本来のトレードから様々な投資活動に軸足を移すところが多いですが、当社は引き続きトレードを重視していく経営方針に変わりはありません。そう考えると、本業であるトレードの中でどのような社会貢献ができるか、これがCSRやESG、SDGsに密接に関わってきます。

――環境・CSR報告書では、ESGのEに結びつく部分で既に実践している様々な施策を紹介しています。

中川 “都市鉱山”を活用するリサイクル事業、バイオマス燃料の供給をはじめとする再生可能エネルギー事業、生物多様性に配慮する木材活用、環境低減に寄与する商材など、いろいろな種を蒔いています。

 そうした事業が形になって、結果的にESGやSDGsに育っていくわけです。ただ、それぞれの事業を具体的にどう結びつけていくのかは、今後論理的に組み立て、目指すところを明確化していくべきだと考えています。

■ 事業を通じた環境保全・社会貢献活動
鉄・非鉄金属のリサイクル
鉄スクラップ事業や中古鋼材のリユース事業のほか、特殊鋼メーカー向けにチタンスクラップ(左写真)とニッケルスクラップを提供。また、使用済みのアルミ缶から再生塊を作りメーカーに供給している(右写真)
生物多様性に寄与する間伐材利用
年間約15万m3の間伐材を中国や台湾などに販売。木材価格の底上げや雇用の確保を通じた地域経済の活性化に寄与するだけでなく、森林による二酸化炭素吸収促進にも貢献している
バイオマス発電に燃料を供給
パーム油を搾る際にできるPKS(パームカルシェル。左写真)や、国産の間伐材チップ(右写真)などの木質系バイオマス燃料を取り扱う。発電事業者に安定供給することで新たなエネルギー創出に貢献している