聞き手/酒社綱一郎(日経BP社取締役副社長)

エプソンは、長期ビジョンに自社の強みを発揮した4つのイノベーションを掲げている。独自の強みを生かし、社会課題の解決に向けた新しい価値の創造にこだわる。

――御社はイノベーションによってESG、SDGsの目標を達成していこうとされています。経営理念に「なくてはならない会社でありたい」という文言を加えた理由を教えてください。

碓井 稔(うすい・みのる)
セイコーエプソン 代表取締役社長
1955年長野県生まれ。東京大学工学部卒業後、79年に信州精器(現セイコーエプソン)に入社し、プリンターの技術開発を手掛ける。93年エプソン初のマイクロピエゾテクノロジーを搭載したインクジェットプリンターなどを開発、商品化に成功。生産技術開発本部長、常務取締役などを経て、2008年代表取締役社長に就任

碓井 稔氏(以下、敬称略) 製品のイノベーションには当然ながら力を入れていますが、単にイノベーションだけにフォーカスすると、世の中に向き合わず、独りよがりになってしまいます。反対に、世の中のニーズに応えるという姿勢だけでは、課題を真に解決するイノベーションを提供できません。また、市場や競合相手の動向にばかり目を向けた企業活動では、本質的な目的を見誤ります。

 私たちならではの強みを生かし、社会課題を解決していくことで、「エプソンがなければこんなに豊かな世界は実現できなかった」とお客様に実感していただけることを目指して取り組んでいます。その意味で、世の中にとって「なくてはならない会社」になろうという表現をしました。世の中の困りごとに正面から向き合い、その社会課題に応えていきたい、お客様の期待を超えて感動をお届けしていきたい、という強い思いを込めています。

 当社は長年、独創性の高い技術を特長としてきましたが、その独創性がややもすると世の中の期待から離れ、独りよがりになってしまってはいないかという反省がありました。そこで私が社長になって以降、これまでの活動を総括する形で、会社が目指すべき姿を明示したのです。

――長期ビジョン「Epson 25」の中で「省・小・精の価値」を提供していくことを掲げています。これはどのような価値でしょうか。

碓井 できるだけ省エネで、小さく、精度の高い製品を目指すことで、お客様に喜ばれる様々な価値が生まれます。そこには環境価値の創造も含まれます。当社が目指すこの価値を「省・小・精の価値」と呼んでいます。

 時計はもちろんプリンターやプロジェクター、ロボットなどすべての製品で、省エネ、小型、高精度を追求しています。そして 「Epson 25」の4つのイノベーションを起こすことで、人やモノと情報がつながる新しい価値創造を目指しています。当社のイノベーションが、より良い持続的な社会の実現に貢献していく、それこそがエプソンの使命であると考えます。

■ 長期ビジョン「Epson 25」
情報通信技術の進展によりサイバー空間が拡大していく中、リアル世界にいるお客様にとって、その接点となる製品がますます重要となる。エプソンはリアル世界で実体のある究極のものづくり企業として、強みである「省・小・精の技術」を基に、「スマート」「環境」「パフォーマンス」という「省・小・精の価値」を提供し続けることで、4つのイノベーションを起こし、人やモノと情報がつながる新しい時代を創造していく
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