聞き手/酒井 綱一郎(日経BP社副社長)

次の100年を見据えて「環境」「加齢」「衣服」など9つの実験的プロジェクトを立ち上げた。自動車や航空機などモビリティの軽量化にも取り組む。

――長期ビジョンで「未来の社会を支える会社」を帝人の目指す姿として位置付けています。これはどのような背景から生まれたのですか。

鈴木 純(すずき・じゅん)
帝人 代表取締役社長執行役員
CEO
1958年東京都生まれ。83年東京大学大学院修了後、帝人入社、医薬品開発に携わる。2011年帝人グループ駐欧州代表を経て、12年帝人グループ執行役員(マーケティング最高責任者)、13年取締役常務執行役員(高機能繊維・複合材料事業グループ長)。14年4月から代表取締役社長執行役員CEOを務める

鈴木 純 氏(以下、敬称略) 「未来の社会を支える会社」という言葉は2つのキーメッセージに分かれています。1つは「未来」の社会に必要とされる会社になること、そしてもう1つが社会を「支える」ことです。未来の社会に必要とされつつ、企業として利益も出し続けながら、当社の強みを活かしていかに貢献していけるかを考えました。

――「支える」という言葉にはどのような思いが込められていますか。

鈴木 当社の事業は表に出るのではなく、世の中を“黒子”として支えるものです。「これが帝人の事業です」と積極的にアピールするのではなく、気づかないうちにみなさんが使っているモノやサービスの中に帝人の存在がある、というイメージでしょうか。

 当社は、在宅利用できる医療機器および各種サービスの提供を行っています。たとえば、近年注目される睡眠時無呼吸症候群の患者さんが安心して日常生活を送ることを手助けします。こうした社会のニーズをしっかりと支え、未来に事業をつないでいきます。

――長期ビジョンの実現に向けて注力すべき3つの重点領域の一つとして「環境価値ソリューション」を挙げています。どのようなプロジェクトが進んでいますか。

鈴木 国連のSDGsも意識し、「低炭素社会」「循環型社会」「地球環境が守られる社会」への貢献を目指し、モビリティの環境性能向上やリサイクルなどに力を入れています。最近ではプラスチック海洋ごみ問題の解決に向けた宣言も出しました。

 なかでもモビリティの軽量化は発展戦略と位置付け、自動車向けや航空機向けに、軽量でありながら強じんな複合成形材料の事業拡大を進めています。モビリティ、すなわち動くものはすべて軽さが求められており、将来に向けた環境負荷低減の観点でも普遍的な要請といえるでしょう。こうした材料も先ほどの在宅医療機器と同様、まさに“黒子”として支えている代表事例といえます。