藤田 香

RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)が農園の制裁措置に動いた。欧米企業が調達を停止したのに対し、日本企業は危機感の薄さが目立った。

 インドネシアの食品大手インドフードが運営するパーム油の農園と搾油工場で、人権侵害があるとして、RSPO(持続可能なパーム油の円卓会議)本部は2018年11月、3カ所の農園と1カ所の搾油工場で認証を取り消す制裁措置を下した。これに伴い、インドフードからパーム油を調達してきたスイスのネスレや英蘭ユニリーバが取引を中止し、同社に融資してきた米シティグループが融資を停止するなど、企業や投資家に波紋が広がっている。

 インドフードはインドネシア最大の財閥サリム・グループ傘下の食品会社で、インスタント麺や飲料などを製造販売している。ネスレやアサヒグループホールディングスとそれぞれ合弁会社を設立するなど、市場への影響力も大きな企業だ。

インドフードが運営するパーム農園で働く少年。児童労働や未払いなどの人権侵害が発覚した。危険な農薬への防護が不十分な労働者も見られた
写真提供:レインフォレスト・アクション・ネットワーク

 今回、人権侵害が発覚したのは、RSPO認証を取得済みの農園。環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)などが児童労働や賃金未払い、危険な農薬への暴露などの人権上、労働上の問題を突き止め、苦情処理メカニズムによって2016年にRSPO本部に通報した。「RSPOの原則・基準に20件以上、インドネシア労働法に10件の違反があった」とRANのハナ・ハイネケン氏は語る。

 通報を受けたRSPO本部は3カ所の農園と1カ所の搾油工場を調査して人権侵害を確認し、2018年11月にRSPO認証の停止を決定。他の農園や搾油工場も3カ月以内に監査することを求めた。

不二製油はいち早く調達中止

 この事態に素早く動いたのが欧米のパーム油購入企業だ。ネスレ、ユニリーバ、米カーギル、米ケロッグなどがインドフードとの取引を停止。日本企業では不二製油が調達を止めた。同社は世界4位の業務用チョコレートメーカーで、責任あるパーム油の調達方針を定め、「森林破壊ゼロ・泥炭地破壊ゼロ・搾取ゼロ」を宣言している。搾油工場までトレーサビリティーを95%確保し、工場リストも開示している。

■ インドフードのパーム油の流れと投融資
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 しかしその他の日本企業の多くは対策を講じず、サプライチェーンへの危機感の無さが目立った。理由はサプライチェーンを遡れていないからだ。「多くの日本企業はパーム油の調達を商社に任せ、インドフードから調達しているかを知らない」とRAN日本代表の川上豊幸氏は嘆く。

 日本の金融機関の感度も同様に低い。欧米の金融機関では、シティグループが2018年4月の時点でインドフードのパーム油事業への融資を停止した他、ドイツ銀行や仏BNPパリバもインドフードへの融資を止めている。これに対し、みずほフィナンシャルグループなど日本の3メガバンクは融資を続けている。

  「3社とも投融資方針にESGや持続可能なパーム油への配慮を盛り込んでいるが、インドフードへの融資はその方針に反する。もしエンゲージメントでインドフードに改善を求めるなら、期限を決めて行うべき」とハイネケン氏は指摘する。