半澤 智

金融庁は、コーポレートガバナンスに関する情報開示を強化する。監査役会の情報開示を充実させ、相次ぐ不正に歯止めをかける。

 金融庁は2018年11月2日、有価証券報告書の記載事項に関する改正案を公表した。早くて2019年1月末の施行を見込んでいる。

 改正案は、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループがまとめた報告書が基になっており、2018年6月に改正されたコーポレートガバナンス・コード(CGC)の内容を反映している。CGCでは、社外取締役、役員報酬、政策保有株に関する取り組みと情報開示の強化を求めており、2019年3月を事業年度末とする有価証券報告書からこれらの情報開示を強化する(下の表)。

■ 有価証券報告書における情報開示の主な改正内容
「2019年から」は同年3月期、「2020年から」は同年3月期の有価証券報告書から適用
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リスクの「羅列」解消

 CGCでは、ESG情報をはじめとする非財務情報の開示も求めている。有価証券報告書の「事業等のリスク」ではこれまで、「投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を一括して簡潔に記載」としていた。そのため、一般的なリスクを羅列した情報開示が多く、外部環境が変化しているにもかかわらず記載内容を変えないケースも多かった。

 改正案では、経営者が認識する主要リスクについて、リスクが顕在化する可能性の程度、時期、影響内容、対応策を具体的に記載すべきとした。金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)では、各国の法律で規定される年次財務報告書に気候変動リスクの記載を求めており、こうした国際的な動きにも同調した格好だ。こちらは2020年3月を事業年度末とする有価証券報告書から適用する。

 監査に関する情報開示も充実させる。監査役会の開催頻度や検討事項、監査役の出席状況や活動内容、監査法人の継続契約年数などを記載する必要がある。

 背景にあるのが、日本企業で相次いでいる不正事件だ。2015年に発覚した東芝の不正会計をはじめ、品質データの改ざんなどが後を絶たない。こうした不正をチェックする監査役や監査役会の活動実態は、企業の外から見えにくい。情報開示によって投資家がリスクを判断できるようにする。こちらも2020年3月期の有価証券報告書から適用する。

 2018年11月19日に、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が有価証券報告書の虚偽記載の容疑で逮捕された。誤った情報開示は、企業の命取りにつながりかねない。