馬場 未希、半澤 智

新たな中期経営計画の策定にESGの視点を持ち込み、持続可能な経営を探った。再エネ投資や、化石資源への依存を抑える事業を柱に据えるという。

 風力発電を将来、事業の大きな柱にしたい。事業全体の経常利益で2〜3割を占める規模に育てる─。コスモエネルギーホールディングス(HD)の桐山浩社長は2018年3月20日、2022年までの第6次連結中期経営計画の発表の際に、こう話した。

 桐山社長は、「社会で脱化石燃料の動きが進む中、持続的な成長を遂げるには将来に向けた新しい事業の柱を作ることが不可欠」と話した。石油精製販売など石油事業の競争力を強化し財務基盤を強化する一方、石油事業の利益を原資に風力など再エネ発電事業に投資し、拡大を図る。

 コスモエネルギーHDの2017年度における経常利益(在庫影響を除く)は1000億円。このうち風力など再エネ事業の経常利益は80億円で、残る920億円は、石油事業で稼いだ。

 同社グループには業界3位の風力発電事業会社、エコ・パワーがある。全国で150基を超す風車を運営し、発電能力は23万kWに達する。陸上の開発案件を事業化し、今後、洋上風力発電事業にも投資する。

コスモエネルギーグループの風力発電事業会社、エコ・パワーが運営する広川・日高川ウィンドファーム(和歌山県)

 中計では、発電能力を40万kWに引き上げ、経常利益を20億円改善する計画を示した。2030年度には発電能力を100万kW超、「経常利益は200億円に拡大する」(桐山社長)。今後5年で事業全体に投じる3600億円のうち、再エネ事業には過去5年の3倍を超す930億円を投じる。

若手の不安を払しょく

 5カ年の中計ながら、第6次中計の冒頭では、2030年や2040年といった長期において事業を持続可能な成長に導くための戦略や方向性を示した。

 2030年頃を目途とする戦略の策定では、人口や、電気自動車(EV)の普及、石油化学製品の需要といった社会変化を定量的に表す政府や研究機関のデータを参照。2030年頃まで「石油の価値は健在」と確認し、再エネ電力の需要も高まると見込む。

 2040年など長期における事業の方向性についても、「SWOT」で分析し、結果を中計に掲載した。SWOTは自身の「強み」「弱み」や、外部からの「脅威」や「機会」などの影響を整理し、成長の方策を探る手法だ。

 気候変動リスクへの関心が高まり、「化石資源に関わるビジネスは将来、資産価値が毀損(きそん)する座礁資産になる」との指摘がある。同社はSWOT分析の結果として、石油開発や石油精製販売の事業に対する脅威が高まるとの見通しと、収益規模の変化をSWOT分析の結果として示した。

 一方、石油を原料に使う石油化学事業と再エネ事業には追い風が吹き、事業拡大の機会が増えると分析。収益規模が拡大するイメージを示した。

 「グループの将来の事業を考える時、パリ協定の下での国際的な気候変動対策の加速は危機感の高いテーマだった」と同社コーポレートコミュニケーション部長の高木勢伊子氏は話す。桐山社長と経営企画、コーポレートコミュニケーションの担当者らがひざを突き合わせ検討した。

 パリ協定の策定を巡り「脱化石」との言葉が世界で注目された頃、全国の事業所を巡った桐山社長は、若手社員との会話から、石油事業の将来に対する不安を感じ取ったという。

 そこで中計の策定に当たり、将来の自社の在りたい姿について若手社員にアイデアを出してもらい、将来の事業を議論する土台とした。

 石油事業の進む道筋と、新たな収益の柱を育てる方針を明確にしたことは、同社の中計に関心を持つ投資家だけでなく、将来を担う若手社員が前向きに業務に打ち込み、誇りを持つよりどころにもなりそうだ。