半澤 智

金融庁と経済産業省が、ESG対話の促進に力を入れている。「ガイダンス」を使って情報公開や対話に取り組む企業が出てきた。

 2018年6月1日、日本取引所グループが改訂コーポレートガバナンス・コードを公表した。これに合わせて金融庁は同日に、「投資家と企業の対話ガイドライン」を公開した。このガイドラインは、企業と投資家の対話で重点的に議論すべき事項をまとめたものだ。企業向けのコーポレートガバナンス・コードと投資家向けのスチュワードシップ・コードの付属文書と位置付けて、採用を促す。

 ESG(環境・社会・ガバナンス)の対話は難しい。場合によっては全く話がかみ合わないケースもある。ある製造大手のIR担当者は、「自社の環境や社会の取り組みをアピールしたいのに、対話の場で全く質問してくれない」と話す。一方、ある資産運用会社のエンゲージメント担当者は、「企業のCSR担当者に一方的にCSRの取り組みを話されたケースがあった。慈善活動の話を延々と聞かされても困る」と嘆く。

 ESG情報をはじめとする非財務情報は数値として示しにくく、ESG情報をどのように企業価値として算定するかは、企業や投資家が独自に決めている。対話の方向性や内容といった共通認識が合っていないケースがある。

「今、どこの話してる?」

 こうしたなか、統一的なルールに沿ってESG情報を開示し、対話に生かそうとする企業や運用会社が出てきた。統一的なルールというのは、経済産業省が2017年7月に策定した「価値協創ガイダンス」で、企業が取り組むべきESG項目などを示したものだ。経産省は5月18日、ガイダンスを対話の「共通言語」として使うべきと提言した。

■ 金融庁と経済産業省が「対話」の指針を公表
ESG経営の実現には実効性のある「対話」が課題。金融庁と経済産業省は、それぞれ対話の指針を公開した

 セブン&アイ・ホールディングスは6月4日、価値協創ガイダンスが定める開示項目に沿った「コーポレートガバナンス・レポート」を公表した。広報担当者は、「機関投資家との対話のきっかけにしたい。グループ企業との認識統一にも使う」と狙いを語る。

 実際の対話の場でガイダンスを活用し始めたのが、投資運用会社のアセットマネジメントOneである。運用本部責任投資部長の寺沢徹氏は、「事業戦略の全体像を把握しながら、今どの部分の話をしているのかといった認識を共有するのに使っている」と話す。

 企業がESG情報の開示や対話に動く一方で、投資家が開示情報や対話内容をどのように投資判断に反映しているかは見えにくい。経産省の提言では、投資家が企業価値の評価手法を示すべきだとした。今後は企業だけでなく、投資家や運用会社も情報開示を求められそうだ。