相馬 隆宏

日産自動車で、排出ガスや燃費試験データの改ざんが発覚した。2017年9月に完成検査で不正があったばかり、信頼回復への道は険しい。

 「我々の活動はまだ道半ば」─。2018年7月9日の記者会見で、日産自動車の山内康裕CCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー)はこう語った。会見では、九州工場を除く国内の全車両工場で、試験環境の逸脱や排出ガス・燃費試験データの改ざんなどがあったことが明らかになった。

排出ガス・燃費測定データの改ざんについて、発覚の経緯や対応策を説明する日産自動車の山内康裕CCO(中央)。2018年7月9日の記者会見に、西川廣人社長は姿を見せなかった

 栃木工場、追浜工場、日産車体九州、日産車体湘南工場、オートワークス京都の5工場で、合計2187台を抜き取り検査した結果、1171台で不正が見つかった。対象は19車種に及んだ。中には、2018年の6月19日まで不正が続いていた工場もある。

 日産は2017年、認定されていない従業員に完成検査をさせていた不正が発覚、その後、再発防止策を講じてきた。今回、不正に関わった従業員10人を含めて全検査員に再教育を実施。経営層は、社内向けのウェブサイトや工場訪問でコンプライアンスに関わるメッセージを発信してきた。6月に発表したESGの中期計画では、「三層構造」の監査を導入すると説明していた。

 にもかかわらず再び不正が起き、山内氏も冒頭のように答えるしかなかった。「今回の問題も(2017年起きた問題と)原因の根っこは同じと考えている。コンプライアンスの意識が希薄な部分がある」(山内CCO)。

ESG評価に痛手

 日産は、排出ガスや燃費について法律よりも厳しい基準を設定しており、カタログに掲載した性能も担保できているという。だが、企業ブランドの毀損は避けられないだろう。

 例えば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用しているESGインデックス(株価指数)。その1つ「FTSE Blossom Japan Index」では、深刻な不祥事を起こした企業は構成銘柄から外され、2年間は選定対象にならない。現在、日産はFTSEの構成銘柄に入っているが、ガバナンスを強化して不正の根を断ち切らなければ、“ESG優等生”の看板が外れる恐れがある。

 牛島総合法律事務所の牛島信弁護士は、「『なぜ』を5回繰り返し、原因を掘り下げて究明することが欠かせない。トップの本気度が問われている」と指摘する。

 日産は今回の不正を受けて、全車両工場で管理・監督者が常時立ち合い、検査を実施するとともに、データの書き換えができないシステムを導入する。原因究明の調査も進めており、この結果を踏まえて再発防止策の見直しなど報告する予定だ。