藤田 香

GPIFが本格的なESG投資を始めて1年経ち、日本企業のESGが底上げされてきた。女性活躍にも向上の兆しがある。今後はTCFD対応なども求められる。

 約150兆円を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESGインデックスを活用したESG投資を始めて1年。2018年8月に「ESG活動報告」をまとめた。3つのインデックスの2017年度の収益率がTOPIX(東証株価指数)を下回ったと報告したが、ESG投資は長期投資であるため短期の収益率は大きな問題ではない。むしろインデックスによって日本企業のESGの取り組みが着実に向上したことが浮かび上がった。

 3つのインデックスは、ESGに総合的に取り組む企業で構成するFTSEの「Blossom Japan Index」とMSCIの「ESGセレクト・リーダーズ指数」、 女性活躍を進める企業で構成するMSCIの「日本株女性活躍指数」だ。構成銘柄数はそれぞれ最新で155社、251社、215社になる。

 FTSEのESG評価では、GPIFが保有する日本銘柄のスコア平均が、2017年3月は5点満点で2.44だったのに対し、2018年3月は2.62に上昇した。「日本企業のESG評価の分布は改善方向にシフトしている」とGPIFも活動報告で分析している(下の図)。

■ FTSEによる日本企業のESG評価スコア
注)ESGスコアは5点満点。各時点でESGスコアが付与されている企業群の数。出所:FTSEのデータからGPIF作成

女性取締役30%以上の企業

 女性活躍の取り組みが向上する兆しも表れた。MSCIのESG評価では、新規採用者の女性比率が2017年から2018年にかけて25%から28%に改善した。ローソン、アステラス製薬、資生堂など女性取締役比率が30%を超えた企業もあった。

■ MSCIのESG格付けの変化の例
注)2017年から2018年の変化

 3つのインデックスは2018年5〜6月に構成銘柄を入れ替えた。セレクト・リーダーズ指数には12社が加わり、12社が除外された。ただし「外れた企業はESG評価より時価総額が下がった原因の方が大きい」とMSCIの内誠一郎氏は指摘する。新たにESGで高評価を得たのは楽天。2017年のBBから2018年はAに2ランク上昇した。「個人情報保護を強化し、方針の策定や社内研修、暗号化技術の導入で社会面で評価を得た」。

 FTSEはESG評価の指標を適時見直しており、2017年から2018年にかけて気候変動の指標に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を反映させた。気候変動が経営に及ぼす影響を分析しているかを評価に加え、日本企業のESGの取り組みに発破を掛けている。

 GPIFの3つのESGインデックスを用いた投資は約1.5兆円。年内には「グローバル環境株式指数」も発表され、運用が始まる見込みだ。インデックスが後押しし、日本企業の取り組みはさらに加速するだろう。