馬場 未希

120社を超える世界大手企業が、長期の温室効果ガス削減目標を設定した。日本企業は大規模な排出源に着目した効果的な対策を進めている。

 2030年など長期の温室効果ガス削減目標を設定した企業が、2018年8月までに世界で126社に達した。

 「科学に整合する削減目標(SBT)」と呼ばれる、企業が自主的に定める目標だ。今世紀末の平均気温を産業革命前と比べて2℃未満の上昇に抑えることに貢献するという。

大規模な排出源を狙い撃ち

 2018年1〜8月に世界で36社、日本は12社が新たにSBT目標を設定した。日本は米国に次いでSBT目標を設定した企業が多い。2018年、設定した日本の12社には、具体的な対策を明示したケースが見られる。排出量の算定基準である「スコープ1、2、3」のうち特に排出量の多い排出源に着目して具体策を明示するなど、効果的な温暖化対策を進めている。

 「スコープ1」は、自社の設備での燃料消費や生産活動による温室効果ガス排出量、「スコープ2」は購入した電気や熱の消費による排出量を指す。「スコープ3」は購入した素材・材料の生産・加工や、物流、販売した製品の使用時などを含むサプライチェーンからの排出量である。

■ SBT目標の認定を取得した企業
数値目標については、2018年にSBTを設定した企業のスコープ1、2削減目標のうち2030年近傍を目標年とするものを掲載した。
特記のない場合は温室効果ガスの総量削減目標。2050年目標やスコープ3目標を設定した企業もある(2018年8月26日時点)
出所:SBTイニシアチブ
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 日本郵船は2018年6月、スコープ1の削減のため、海上輸送量当たりの温室効果ガス原単位を削減する目標を設定した。2030年度までに2015年度比で30%減らし、2050年度までに同50%減らす。船舶などの運航によるスコープ1排出量は、スコープ1〜3合計排出量の9割強を占めている。

 設備のデジタル化やIT(情報技術)の採用を進め、船舶の運航や配船などの効率向上を徹底する。さらに船舶の運航に使う燃料を、従来の重油から、CO2排出量の少ない液化天然ガス(LNG)に切り替えを進める。後押しするのが、5月に発行した「グリーンボンド」(環境債)だ。

2017年にサービスを始めた日本郵船のLNG燃料供給船

 グリーンボンドは調達した資金の使途を環境配慮の事業に限定する債券だ。日本郵船は、海運業界で初めて100億円発行した。国内で活発化するESG投資の受け皿として投資家の注目を集めている。調達した資金はLNG燃料船や、これに燃料を供給するLNG燃料供給船などに投じる。重油を使う船舶と比べてCO2排出量を30%減らせるため、スコープ1目標への貢献が見込まれる。