半澤 智

ESGへの配慮を盛り込んだ新たな中期経営計画で仕切り直しを図る。業績低迷を打破する一手となるか。松倉肇取締役に聞いた。

 NECは2018年1月、2018年度まで3カ年の中期経営計画を撤回し、2018年度から3カ年の「2020中期経営計画」を策定した。新たな中計の策定に当たり、ESGの視点を盛り込んだマテリアリティ(重要課題)を定め、成長分野に位置付けた。

「技術が価値になっていない」

――経営のマテリアリティを刷新した経緯と狙いは。

松倉 2017年4月にCSO(最高戦略責任者)に就任し、事業領域を変えながら持続的に成長するための仕組みづくりを模索していた。社外の有識者や投資家などと議論すると、環境や社会といったESGを重視する方向に世の中がシフトしていると感じた。また、「NECは優れた技術を持っているのに、それを価値に変えられていない」という指摘を数多く受けた。

 2017年9月、こうした問題意識を取締役会で報告した。当初は簡単な現状報告で終わるはずだったが、社外取締役から「ESGを流行として捉えるのではなく、NECが事業でどんな価値が提供できるかを考えるべきだ」という強い意見が数多く出て議論が白熱した。ちょうど新たな中計の策定に着手していたため、ESGへの配慮をマテリアリティの主要な要素とし、新たな中計に盛り込むことにした。

 新たに定めたマテリアリティは9つ。そのなかで特に成長領域と位置付けたのが、「都市の安全」と「供給網の革新」である。

 「都市の安全」は、安心・安全な街づくりの取り組みだ。都市人口は、2050年に現在の1.6倍になるといわれている。世界で治安の維持やインフラの安全確保が課題となる。

 2020年の東京オリンピックでNECの顔認証システムの採用が決まった。これは中核技術の1つだ。アルゼンチンのティグレ市では、監視カメラを使った「街中監視システム」を運用している。自動車の盗難が8割減り、安全性が認知されたことで観光収入が3倍になるといった効果が出ている。こうした取り組みをグローバルに展開する。

2020年東京オリンピックで採用が決まった顔認証システム(左)。大会関係者の入場時における本人確認に利用する。アルゼンチンのティグレ市で運用中の「街中監視システム」(右)。街中に設置したカメラの映像を解析して危険を検知する

 「供給網の革新」は、ぶつ切りになっているサプライチェーンをつなぐことで産業に新たな価値を提供する。AI(人工知能)を活用した需要予測技術を使い、物流の効率化や食品ロスの削減などを実現できると考えている。

 正直に言えば、KPI(主要業績評価指標)は、まだしっかりと設定できていない。2017年から中計の進捗を管理し、毎年、内容を見直すことにした。KPIを定めるプロセスをステークホルダーに示しながら、KPIのレベルを上げていく。