藤田 香

GPIFは新たに環境に関する指数を発表し、1.2兆円の投資を始めた。炭素効率性が高く、情報開示を進める企業への投資比重を高め、取り組みを促進する。

 約160兆円を運用する世界最大の機関投資家、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2018年9月25日、温暖化対策に焦点を当てた環境指数を新たに採用し、1.2兆円規模でESG投資を開始したと発表した。国内株式1694銘柄、海外株式2162銘柄に投資を始めた。

 GPIFは2017年7月にESGインデックスを用いた本格的なESG投資に乗り出した。ESGを総合的に評価するFTSEとMSCIの指数、女性活躍を評価するMSCIの指数の3つのインデックスを活用し、ESG投資を進めた。3つを合わせた投資規模は現在1.5兆円。環境の取り組みを後押しするため新たに募集したのが、今回の指数だ。

 環境全般と温暖化対策に焦点を当てた合計17指数の応募があったが、GPIFは温暖化対策に絞ったS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社の「カーボン・エフィシェント指数」を選んだ。日本株向けと海外株向けがある。日本株の場合、TOPIX(東証株価指数)の2103銘柄を対象とし、流動性や情報開示の有無、不祥事から企業をスクリーニングして1694銘柄を組み入れた。

■ GPIFが採用しているESG指数
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■ カーボン・エフィシェント指数の企業選定
*温室効果ガス排出量が世界で上位100位以内だが、開示していない企業
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 組み入れに際して、炭素効率性が高く、温室効果ガス排出量の情報開示をする企業ほど投資比重を高めた。また、排出量の大きな業種ほど取り組み効果が大きいとして比重を高めた。各社の炭素効率性の算定にはS&Pグローバル傘下の英トゥルーコストがCDPの回答や独自モデルを使って推定したデータを使う。

ダイベストしない方針

 今回の環境指数は日本株だけでも1694銘柄と多い。GPIFは規模の小さな上場企業も組み込むことで、炭素効率性向上や情報開示が市場全体で進むことを狙う。石炭関連企業など環境負荷の大きな企業もダイベストしない。むしろ組み込むことで業種内の競争原理が働くことを狙った。

 環境全般の指数は今回採用しなかった。背景に評価の難しさがある。例えば環境配慮製品を提供する企業を評価するのに、「技術の優劣の判断が容易ではない」(GPIF)。また、温暖化対策と資源循環や生物多様性の活動がトレードオフになることもある。「SDGsが登場して多様な取り組みが複雑に絡み、何が環境に本当によいのか分かりにくくなった」とあるESG評価機関は話し、「GPIFも悩んだのでないか」と吐露する。

 環境指数の登場で市場全体に温暖化対策や情報開示のインセンティブが高まり、運用会社からの圧力もいっそう強まりそうだ。