半澤 智

形だけのコーポレートガバナンス・コードへの対応に警鐘を鳴らす。企業の安定成長には、株主を選ぶという考え方が必要だと訴える。

――企業は今、改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応を迫られている。最大の課題は何か。

中島 茂
中島経営法律事務所代表。1979年に弁護士登録し、83年に中島経営法律事務所を設立。経団連の行動憲章の策定に関与。企業のガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントなどが専門。著書に『株主を大事にすると経営は良くなるは本当か?』など(写真:中島 正之)

中島 茂氏(以下、敬称略) 改訂コードに取締役会の「多様性」が盛り込まれた。これが最大の課題だ。今、製品の原料調達は多国籍で、家電メーカーが自動車業界に参入するなど、地域や業種の垣根を越えた経営が求められている。

 一方、日本企業の取締役会は、「職人の集まり」だ。1つの企業で腕を磨いた社内出身の取締役が経営をかじ取りしているケースが多い。異なる国籍、業種、性別などの視点を経営に取り入れる体制がなければ、グローバル競争には勝てない。日本企業は、この気付きが遅い。

 改訂コードに対応しようと今後、多くの企業が社外取締役に女性や外国人を起用するだろう。しかし、こうした人たちの意見を真剣に聞き、経営に生かすという意識がなければ意味がない。ガバナンスにおける多様性は、女性活躍や働き方改革とつながっている。女性や外国人が働きやすい環境を整え、育成していくのが在るべき姿だ。

 改訂コードへの対応策について多くの企業から相談を受ける。真面目に対応しようとする姿勢は評価できるが、株主や投資家から良い評価をもらうための取り組みと考えている企業が多い。ガバナンス対応は、消費者や社会に良い製品やサービスを提供するために実施するものだ。

個人株主は「世論」

――新著『株主を大事にすると経営は良くなるは本当か?』を執筆した。このタイトルに対する答えは。

中島 どのような株主に投資してもらいたいかは経営者が決める。ただ私は、株式を長期保有してくれる個人株主を増やすべきだと考えている。日本における個人株主の持ち株比率は17.1%だが、人数比では97.3%と圧倒的で、その人数は延べ5000万人といわれている。長期保有してくれる個人株主を増やすことが、経営の安定化につながる。

 リターン獲得の責任を負っている機関投資家は、リターンが望めなくなれば投資を引き揚げる。一方の個人投資家は、企業の姿勢や価値観に共感して投資するケースが多い。個人株主は、その企業にとっての「世論」だ。機関投資家といえど、世論を無視した議決権行使はしにくい。

 近年は、将来の資産形成を真剣に考えている20〜30代の個人投資家が増えている。こうした若い世代の株主や投資家の声に耳を傾けることが、企業の持続的成長につながる。

 個人投資家を増やすには、株主総会の招集通知の内容を分かりやすくしたり、株主総会の運営を工夫したりする必要があるだろう。手間とコストがかかるため企業は敬遠しがちだが、広報部門などと連携して戦略的に推進すべきだ。そのためには、経営者の強いリーダーシップが欠かせない。