――自動運転による無人化は顧客価値の向上に大きく貢献したのか。


野路 無人化だけでは不十分だ。工法が変わらないなら、ただの人手不足対策にしかならない。イノベーションを起こすには、仕事のやり方が変わるような変革が必要だ。

そこで一般建機の自動化では、人ができないことに取り組んだ。具体的には熟練オペレーターを上回る精度での作業を自動制御で実現すること。ICTブルドーザーに自動制御の機構を組み込んで、熟練オペレーターでもプラスマイナス50mmだった整地の精度をプラスマイナス15mmにした。同様にICT油圧ショベルでは、熟練オペレーターでも実現が難しい綺麗な傾斜を仕上げられるようにした。これらのICT建機には、現状の地形データと施工図面データを3次元データで入力する。だから、地形データを3次元データとして測量する技術も開発した。

ICT建機は有人車両であり、無人化していない。整地や仕上げ掘削は機械に実行させるが、他はオペレーターが操作する。自動車の自動運転開発も同じではないだろうか。まっすぐ走る、ブレーキをかける、追い越しをする、駐車する――。こうした自動車が実行することを一つずつ高い精度で自動運転できるようにして、成果を積み上げていくことになるだろう。

コマツのICTブルドーザー(左)とICT油圧ショベル(出所:コマツ)


――自動運転車の普及による産業面での変化としてはどんなものが予想されるか。


野路 自動車の世界について言えば、自動車修理サービスは大きく変わるだろう。ポイントは二つある。第一は専門性が高まることだ。クルマが自動運転対応になれば、そのためのメンテナンスは極めて専門的になっていくはず。これまでクルマが装備していなかったセンサーや運転ソフトがクルマに搭載されるようになるから、それぞれ専門のメンテナンスが求められる。今ある街中の自動車修理工場では対応できなくなる可能性が高い。

第二は稼働率が高まること。米ウーバー・テクノロジーズのような配車プラットフォームを活用したオンデマンド配車サービスが一般的になれば、自動車の稼働率が高まる。当然、クルマは酷使されることになるのでクルマを修理する頻度も高まる。稼働率が高いので、修理期間をできるだけ短くしたいというニーズも強まるだろう。

(後編に続く)

この記事は日経BPクリーンテック研究所の研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」に掲載したものの転載です(本稿の初出:2017年10月5日)。