江戸のまちで不動産の管理などにあたった「家守(やもり)」。いまで言うエリアマネジメントの担い手だ。その現代版が、リノベーションまちづくりに取り組む家守会社として各地に誕生している。まちづくりインフラとして定着しそうな現代版家守の役割や展開を、10年以上前からその育成に携わる建築・都市・地域再生プロデューサーの清水義次氏に聞いた。

――現代版家守はここ数年、リノベーションまちづくりの担い手である家守会社という形で広がりを見せているように感じます。

建築・都市・地域再生プロデューサーの清水義次(しみず・よしつぐ)氏(以下、人物写真の撮影は尾関裕士)

清水 全国各地でリノベーションスクールを開催しています。スクールでは不動産オーナーから空き物件を実際に提供してもらい、それを活用したリノベーション事業を提案しています。エリアを変えるコンセプトを背負った遊休不動産の活用プロジェクトを、補助金に頼らず実現する、という提案です。

 最終日にはオーナーを前に提案を発表します。中にはぜひ実現してほしいというオーナーもいます。面白いことに、提案チームの中でやる気のある人たちが家守会社を立ち上げて事業化を図っていく。だから、スクールを終えると、家守会社がぼこぼこっと誕生します。全国でもう50社くらいが設立されて活発に活動しているのではないでしょうか。

――家守会社の担い手はどのような人たちですか。

清水 地域の20~30代が主体です。東京や大阪に出たものの地元が好きで戻ってきた人や、今は東京や大阪で仕事をしているけれど、リノベーションスクールへの参加を機に地元に戻りたいという人などです。育ったまちを好きな人が多い。パブリックマインドを持っていて、不動産活用の新しい企画提案ができる人材が結構います。

――不動産活用を通じた新しい事業の提案ですね。

清水 そうです。新しいタイプの都市型産業を生み出す提案が多いですね。空き物件に対してはテナントを誘致するのが一般的ですが、その場合、テナントは同じ都市内の別の場所から連れてくるだけ。それでは課題解決になりません。

公共投資を生かす取り組みも

――リノベーションまちづくりが最近、勢いづいている背景は何ですか。

清水 行政側の施策と連動するようになってきました。例えば北九州市は2010年度に小倉家守構想を策定しています。その小倉家守構想をコンセプトとする民間のプロジェクトを、遊休不動産のオーナーと家守会社が一緒になって補助金に頼らずに実現し、構想の具現化を図ってきました。公民連携の形が定着してきたわけです。

 さらに公共投資と組み合わせる例も出てきました。愛知県岡崎市では市内を流れる乙川の河川敷を中心にリバーフロント地区整備計画を進めています。事業費約100億円の公共事業です。その公共投資が生きるように、河川沿いのエリアでリノベーションまちづくりを仕掛けています。

――そうした公民連携の意義はどこにありますか。

清水 公共不動産の活用に行政とともに取り組めるようになる可能性が出てきたという点です。行政だけではその保有不動産を支えられない状況です。そうした公共不動産をまちのために生かし、公共施設を維持するための経費を稼ぐ取り組みが控えています。

――先ほどから「補助金に頼らずに」と強調されています。

清水 それは、持続性が何より大事だからです。補助金や委託金に頼ると、それが途切れたときに事業はストップしてしまいます。適正な利益を上げながら事業を継続していくことが求められます。

 家守会社では初期投資を短期間に回収し、次の事業に再投資していきます。ポイントは、テナント先付け方式です。これは、計画がまとまったら簡単な模型でも作って、テナントを先に集めるものです。賃料は、その地域で想定するテナントが支払える限度額。その積み上げを基に5年程度で回収可能な投資規模に設定します。

 もちろん、まちづくり事業としてのコンセプトは何より大事です。エリアを変えられないプロジェクトでは意味がありません。

――エリアの価値を高めろということですね。

清水 リノベーション事業という新しいまちのコンテンツをつくることでエリアが変わっていくのです。単なるリノベーション事業者との違いは、事業の効果をエリア全体に波及させることを最終目標とするか否かです。