駐車場がますます余る時代になっていきそうだ。人口の減少や利用ニーズの変化を背景に自動車保有台数の伸びは鈍化する一方で、ビル開発に伴って整備される駐車場の受け入れ台数は依然として伸び続けている。そのギャップの修正を図るのが、東京都内で運用されている地域ルールだ。国はその運用を全国に広げ、余剰分の活用検討を促していく考えだ。

「駐車場の余剰分は物流センターや備蓄倉庫など新しい使い方を考えていくことになる。既存の資源を活用しようという考え方だ」――。国土交通省都市局街路交通施設課街路交通施設安全対策官の奥田謁夫氏は駐車場の転用イメージを紹介する。

大都市中心部で駐車場に余剰分が生まれている。一定規模以上の新築ビルに整備が義務付けられる付置義務制度に基づく駐車場で、例えば公共交通の利便性が高いエリアなどではその付置義務駐車場に供給過剰の傾向が見られる。

そこでいま国が求めているのは、駐車場供給量の適正化だ。付置義務制度で駐車台数を求める基になる原単位の見直しとともに、地域特性に応じた駐車施設の整備基準である「地域ルール」と呼ばれる仕組みの導入を促している。

国交省の奥田氏は「自治体ごとに事情を見ていくと、どの都市でも稼働率が高くない場所が多い」と指摘する。「ビル事業者の単位で駐車場の確保を考えてきたが、これからはまちづくりの観点で駐車場の供給を考えていく必要がある」。

駐車場余剰の背景にあるのは、自動車保有台数の伸びの鈍化である。図1で示したグラフから分かるように、自動車保有台数は昭和40年代以降、右肩上がりに増え続けてきたが、2000年前後を境に伸びが鈍ってきた。

(図1)駐車場総台数と自動車保有台数の推移。自動車保有台数は2000年前後を境に伸びが鈍っているが、駐車場総台数は付置義務駐車施設を中心に、それとは無縁に伸び続けている(資料提供:国土交通省)

ところが同じグラフに表れているように、駐車場総台数はそれまでと変わらない勢いで伸び続けている。自動車保有台数の伸びが鈍ってきたからと言って、駐車場総台数にブレーキが掛かることはないのである。

なぜ、ブレーキは掛からないのか。原因の一つが、付置義務制度にある。

冒頭で説明したように、付置義務制度は一定規模以上の新築ビルに条例で定める台数の駐車場を整備することを義務付けるもの。ビル開発で発生する駐車需要にはビル内で対応してもらおうという原因者負担の考え方に立つ。

この制度に基づく付置義務駐車場はビル開発に併せて整備されていくため、開発事業の盛んな大都市中心部では年々増えていく。自動車保有台数の伸びが鈍化しようが、その傾向に変わりはない。そこに、ギャップが生じる一因がある。

需要は付置義務台数の3分の2

しかも付置義務制度が一律に求める駐車台数の規模は、公共交通の利便性が高い大都市中心部では実際の駐車需要を上回る。

例えばJR東京駅前に広がる大手町・丸の内・有楽町(大丸有)地区。この地区内には、ターミナルであるJR東京駅のほか、東京メトロ・都営地下鉄5路線の大手町駅や同3路線の日比谷駅など、公共交通の拠点が数多く立地する。

この地区は冒頭で紹介した地域ルールを2004年11月から運用している。地域ルールの運用を担う大手町・丸の内・有楽町地区駐車環境対策協議会(以下、大丸有駐車協議会)事務局の白根哲也氏は、ルール策定に至る事情をこう振り返る。

「鉄道網の発達したサラリーマンのまちであることから、自動車の交通手段分担率は低い。駐車場はもともと過剰だった。しかもそれが、ルール策定前の約1万2000台から将来は約1万8000台まで増えることが想定され、ますます空きが生じる見通しだった」

この当時は、付置義務制度運用前に建設されたビルも少なくなかった。大丸有駐車協議会事務局長の渡邊仁氏は「制度運用前のビルは1層分まるまる駐車場という考え方。付置義務制度で義務付けられる駐車台数を上回るビルもあった」と説明する。

そこで必要になったのが、駐車場供給量の適正化である。大丸有駐車協議会事務局の白根氏は「ならしてみると、個別の需要推計に基づく駐車台数は付置義務制度に基づく駐車台数の3分の2程度。ただ実際には、それでも空きが生じている」と指摘する。

地域ルールはそうした駐車場供給量の適正化に向けた手法の一つ。どのような仕組みなのか、大丸有地区を例に具体的に見ていこう。

東京都が条例を改正し、地域ルールに基づく駐車施設の設置を可能にしたのは、2002年10月。以降、銀座地区や大丸有地区といった公共交通の利便性が高い繁華街やターミナル周辺などを対象にルールが策定されてきた(表1)。

(表1)東京都内で策定済み・策定中の地域ルール。付置義務台数の減免、隔地規定の積極的運用、負担金・協力金制度の導入が、3本柱と言える(出所:国土交通省資料を基に筆者が作成)

この中で大丸有地区は、付置義務台数の減免を規定した地域ルールとしては策定第一号にあたる。路上駐車の排除や駐車場への誘導などに地域で取り組み、交通の円滑化と安全性の確保を図ることも、目的の一つに掲げる。