「都市木造」が勢いづきそうだ。国産材をどんどん活用しようと、庁舎や学校など公共建築物だけでなく、都市部では「ビル」と呼びたくなる中層の建築物も木材で建設されるようになってきた。これら「木のビル」によって、その無機質さから「コンクリートジャングル」と冷たく言い放たれてきた都市の姿が、少しずつ変わろうとしている。

また一つ、「木のビル」が新しく建設される。JR国分寺駅前で2017年7月の完成を見込む国分寺フレーバーライフ社本社ビルである。「木のビル」として初の地上7階建て。2階と3階はビルの外を木材が覆い、その上の4階から7階まではガラス越しに木材の柱や梁が姿を見せる(写真1)。都市部の駅前としては珍しい光景が出現する。

(写真1)国分寺フレーバーライフ社本社ビルの完成予想。外装や内部に木部を見せる空間は、駅前の密集地で異彩を放つ(画像提供:スタジオ・クハラ・ヤギ)

建築主は国分寺を拠点にアロマテラピー関連事業を展開するフレーバーライフ社。1階は販売部門、2・3階は生産部門、4階はトリートメントサロン、5階以上はオフィスという構成だ(図1)。ビルの外からは分からないが、顧客の出入りする1階や4階、オフィスの一部である6階や7階は、外装材と同じ地元多摩産のスギを床材に用いる。

(図1)国分寺フレーバーライフ社本社ビルのフロア構成。地上1階から3階までに販売部門や生産部門が、4階以上に営業部門や総務部門などが入る。敷地面積は180.80㎡、延べ床面積は602.11㎡。施工は住友林業(画像提供:スタジオ・クハラ・ヤギ)

ここで「木のビル」と呼ぶのは、木質の部材を構造材として目に見える形で用いたもの。法律上は2000年6月、都市部でも階数や床面積の制限なく建設可能になった。第1号は、金沢市内に2005年9月に完成した「金沢エムビル」だ。

それから10年余り。後に続く例は残念ながらまだ数えるほどしかない。国分寺フレーバーライフ社本社ビルのプロジェクトでは「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」という国の補助事業を利用しながら、閉塞状況に風穴を開けることを目指す。

「木のビル」が競争力の強化にも

社会的な意義はある。その一つは、地球温暖化対策。木材を利用することで、それが大気中から吸収した二酸化炭素(CO2)を建築物として固定できる。これまでは木造住宅がその役割を担ってきたが、人口の減少やストックの増加に伴って着工戸数が減る見通しの中で、最近は非住宅のビルでの利用に期待が寄せられている。

さらに、競争力強化に向けて都市をどう特徴付けていくかという点にも、その意義は見込めるという。NPO法人team Timberize監修の下で国分寺フレーバーライフ社本社ビルの建築設計を担当したスタジオ・クハラ・ヤギ代表取締役の久原裕氏はこう説く。

「かつて江戸は世界最大の木造都市だった。木材を利用することは、東京を表現するのにふさわしい文化でもある。特徴あるビルによってその都市が初めて認識されるような今の時代には、伝統的な木造の技術と現代的な建築技術とを組み合わせたビルによって東京を表現することが求められている」

建築主が企業であれば、その理念や姿勢を表現するのに自社ビルに木材を用いるのが適しているということも考えられる。ブランディングの一環としての木材活用である。国分寺フレーバーライフ社本社ビルの場合も、そうした側面がある。

それにしても、鉄やコンクリートに比べ火災に弱い印象を受ける木質の部材を構造材として用いることが、なぜ許されるのか――。

それは、「燃え止まり」と呼ばれる現象が見られるから。木材は着火し、激しく燃えても、その後は炭化していき、そのうち自然に鎮火する。その段階で燃えずに残った部分が構造材として十分な性能を保っていれば、構造上の問題はない。こうした部材は、一定の耐火性能を持つものとして国土交通大臣の認定を取得している。

国分寺フレーバーライフ社本社ビルで用いる木質の部材は、その認定を受けた「木質ハイブリッド集成材」と呼ばれるものだ。見た目は木材を組み合わせた集成材だが、その真ん中には鉄骨が組み込まれている。これらを柱や梁としてビルを建てる場合には、構造上はよくある鉄骨造りと同じように設計できる。通常の鉄骨造りでは鉄骨の温度上昇を防ぐ狙いでその周りに耐火被覆材と呼ばれるものを吹き付けたりするが、木質ハイブリッド集成材では鉄骨の周囲を覆う形の集成材がその役割を果たす。