ネット通販の急増や共働き・単身世帯の一般化に伴い、再配達問題が深刻化している。その社会的損失は莫大なものであり、各宅配事業者をはじめ、国土交通省や経済産業省なども対策に乗り出す。この課題に光明を見出すべく、福井県あわら市、ヤマト運輸、日本郵便、パナソニックが宅配ボックス設置の実証実験を実施。驚くべきポジティブな結果を生んだ。未来につながる有意義な取り組みを当事者たちの証言から振り返る。

荷物の爆発的増加とライフスタイルの変化が再配達の誘因に

再配達の対象は全体のおよそ2割。年間で約9万人分の労働力が消費され、CO2の増加は山手線内側の約2.5倍にあたる面積の杉林の年間吸収量、約42万トンに相当する――国土交通省が2015年に発表した再配達による社会的損失の試算結果は、実に衝撃的なものだった。

再配達を増やす大きな要因の1つがネット通販の急増だ。同じく国土交通省の調査によれば、2010年度~2014年度までの5年間で宅配便の取り扱い個数は約4.7億個/11%も増加。これは見事にスマートフォンの普及期と重なっており、どこでも・好きなときに・欲しい商品を“ポチる”文化があまねく浸透したことの証左と言える。

国土交通省発表資料「宅配便取扱実績関係資料」より作成

共働き・単身世帯の増加といった社会環境の変化も拍車をかける。2016年の共働き世帯は1129万世帯(労働政策研究・研修機構の公開資料より)と過去最高を記録し、2015年の国勢調査結果では単身世帯が1841万8千世帯となり、一般世帯の34.6%を占めるまでになった。つまりこれは、昼間の在宅人口が減っていることを意味する。

こうした中、1つの解決策として期待を寄せられるのが荷物を受け取る宅配ボックスである。だが、大都市圏の比較的新しいマンションでは一般的になってきたとは言え、戸建て住宅への浸透率はまだ低いままだ。そこで約25年前から住宅用宅配ボックスの商品開発・販売を手がけてきたパナソニックが福井県あわら市、ヤマト運輸、日本郵便と協力。2016年12月~2017年3月にかけ、106世帯のあわら市在住共働き世帯を対象に「宅配ボックス実証実験」を実施した。

再配達率が49%から8%に! 大成功に終わった実証実験

福井県は3世帯同居率が高く、共働き率全国1位(2010年)の県として知られている。中でも県の北端に位置するあわら市は共働き世帯が多く、かねてより「働く世代応援プロジェクト」を実施。共働き世帯に対し、手厚い子育て支援策などを積極的に行ってきた。今回の宅配ボックスプロジェクトは、その支援策の一環として協力したものだ。少子高齢化、地方都市からの人口流出が社会課題として叫ばれる昨今、インフラ整備ではなく、そこに住む人の満足度を高めるという手法で都市の魅力を高めた点でも大きく注目を集めた。

実験開始前、2016年10月時点のモニター世帯の再配達率は49%と全国平均と比較しても高い数値であった。本プロジェクトの結果、再配達率は平均8%と約6分の1まで激減。宅配業者の労働削減時間想定値は222.9時間、再配達削減によるCO2削減量想定値(杉の木換算本数)は約465.9kg(約33.3本分)と、絶大な効果をもたらした。

パナソニックホームページ 「宅配便の再配達がない」まちをつくろう。宅配ボックス実証実験 より引用。

設置した世帯からも「核家族にとっては非常に助かる」「ネット通販利用者には最高の商品」「夜間の受け取りで、子どもと風呂に入っているときに受け取れなかったりするストレスがなくなった」など好意的な意見が数多く寄せられ、好評を得た。さらに同プロジェクトは共働き世帯以外にも良い結果を及ぼしているという。

共働き世帯が多いだけでなく3世帯同居率も高い同市は、日中に高齢者の在宅率が高かった。しかし、3世帯住宅であるために家が広く宅配業者の呼びかけにも気づかないケースや、足が悪くてすぐに対応できない、といった事情から不運な再配達が多かった。こうした際にも宅配ボックスが設置されていたことにより不運な再配達を防ぐことができたようだ。

あわら市では2017年7月から宅配ボックス設置の補助金制度をスタート。実際に補助金を利用して宅配ボックスを設置した世帯も出てきた。実験の成功をニュースで耳にした全国の自治体からも問い合わせが相次ぐ。とりわけ千葉県、埼玉県、兵庫県、岐阜県など3大都市圏からの声が多い。再配達問題で頭を抱える自治体は多く、こうした取り組みは良い参考事例になるだろう。