<この記事を要約すると>

  • 東京都は2019年までに中核エリア内の都道の無電柱化を完了させる計画
  • パナソニックと東京電力はこの目標に向け協働プロジェクトを立ち上げた
  • 電柱の代替となる配電設備にサイネージを設置し、情報提供
  • 非常時の情報提供や広告媒体としての可能性も高い

東京都は2018年3月、都市の防災力を高め、安全・安心に暮らせる「セーフ シティ」を実現するために「東京都無電柱化計画」を策定した。そして現在、この計画と並行して、無電柱化後の配電インフラを活用した街路空間の多機能利用を目的とする「スマートストリート・ソリューション」の実用化が、パナソニックと東京電力によって進められている。両社が挑む新たなまちづくりのカタチに迫った。

街路空間の多機能利用を目指す

東京都の無電柱化推進計画の柱となるのは、2019年までに、都市機能が集中するセンター・コア・エリア内(首都高速中央環状線の内側)において、都道の無電柱化を完了させ、さらに重点整備エリアを環状7号線の内側エリアに拡大させるというものだ。

計画の推進に伴って無電柱化、具体的には配電線の地中化が進むが、その際には電柱に替わる地上機器が必要となる。この“新たな配電設備”に着目したのがパナソニックと東京電力だ。

両社は2016年、この配電設備(地上機器)を活用して道路空間の多機能化を図り、安心・安全で便利なまちづくりを目指す「スマートストリート・プロジェクト」を立ち上げた。地上機器の上部にサイネージ機器を設置して、災害時の避難誘導や訪日外国人向けの情報提供、自治体などからの情報発信の場として活用しようというものだ。同時にスマートフォンや電気自動車の充電器としての役割なども持たせるよう検討を進める。

無電柱化によって設置される地上機器を活用

プロジェクト立ち上げの経緯について、パナソニック株式会社の渋谷哲氏は、次のように説明する。

「以前から我々は屋外のサイネージ事業に取り組んできましたが、特に道路上の情報化が遅れていると感じていました。その大きな理由が“必要な設備を置く場所”が確保しにくいことです。ちょうどそんな時、懇意にしている東京電力の担当者の方から、自分たちも電気の売買だけでなく、配電設備そのものを有効活用したいと考えているという話を聞きました。特に東京都では2020年を1つのターゲットに無電柱化推進計画が動き出しており、今後地上機器も増えていく。これは強い追い風です。今両社がタッグを組めば、色々と面白いことができるのではないか。そうして始めたのが、スマートストリート・プロジェクトです」(渋谷氏)

パナソニック株式会社
東京オリンピック・パラリンピック推進本部
戦略企画部
プロジェクト推進課
主幹
渋谷哲氏

無電柱化の推進には地域住民の理解が不可欠

スマートストリート・プロジェクトでは、“街路空間をどう活用していくか”というアイデアについては、共同企画開発の協定を結び、お互いに知恵を出し合って検討を行うという形で進めている。プロジェクトの中から生まれたアイデアを特許申請する際も両社の連名だ。

そしてソリューションの実装に当たっては、パナソニックがサイネージ機器の開発・提供とコンテンツ配信の仕組みを、東京電力が配電設備の設置における改善・改良などを担当する。

ただしこの時、ソリューション提供の基盤となるのは、何と言っても地上機器だ。東京電力パワーグリッド株式会社の田中正博氏は「“新しい社会インフラ”となるものなので、よりきめ細かな配慮が必要でした」と強調する。

「地上機器は電柱を代替する設備なので、中には当然、これまで柱上にあった変圧器が入っています。万一故障でもすれば、その地域一帯の大停電に繋がる恐れがあり、また上部に設置されるサイネージ機器への電磁波の影響や地面の震動なども十分に考慮しなければなりません。海が近い場所なら塩害対策も必要ですし、今後の普及も見据えた時には、施工やメンテナンスのしやすさも重要です。新たな社会インフラとしての仕様を、いかにして担保するか。まさに社内一丸となって取り組んだテーマです」(田中氏)

東京電力パワーグリッド株式会社
事業開発室
副室長
博士(工学)
田中正博氏

現在都内では、既に約3万台の地上機器が20~40m間隔で設置されている。主な設置場所は都道や国道、鉄道の駅前広場や公園などだが、それらの場所は必ずしも電柱が立てられていた場所とは限らない。今後無電柱化が進めば、今まで何も無かった住宅地の真ん中に地上機器を設置する必要性も当然出てくる。

「その時、地域住民の皆様にとっては、突然家の前に見たことのない機器が置かれることになります。理解を得ることができなければ、無電柱化の計画そのものが進みません。サイネージでは様々な情報をご提供することができる。東電はそうしたスマートストリート・ソリューションの価値を地元の皆様にきちんとご説明し、合意形成を取るという役割も担っています」(田中氏)

様々な情報を提供することができるストリートサイネージ(地上機器+サイネージ)

機器に搭載された様々なICT技術が多様なサービス提供を可能にする

それではスマートストリート・ソリューションが提供する価値とは、具体的にどのようなものなのか。

まず挙げられるのが、地上機器上部に設置されるサイネージ機器による情報提供だ。パナソニックがコンテンツ配信システム(CMS)を提供し、例えば自治体が作った観光案内や防災情報などのコンテンツを同社のクラウドセンターに集約、対象のサイネージ機器に配信する。災害発生時には、避難経路を表示して帰宅困難者を誘導するというシーンでの活用も想定される。

ストリートサイネージの活用例:災害時の避難誘導

またスマートストリート・ソリューションでは、Bluetoothやパナソニック独自の光ID技術(LinkRay)などを搭載することで、見守りサービスやクーポンの配信なども可能にしており、さらに地上機器の電力を使えば、街行く人々やドライバーに対して、スマートフォンや電気自動車の充電サービスを提供することもできる。

「今後ストリートサイネージ(地上機器+サイネージ機器)の認知が広がれば、街中でこうしたサービスを利用することも当たり前になる時が来ると考えています」(渋谷氏)

街中で電気自動車やスマートフォンの充電が可能になる