<この記事を要約すると>

  • 2020年に向け、玄関口である空港の運営効率化が急務となっている
  • 航空旅客搭乗橋を航空機のドアに自動装着する実験がスタート
  • ドアの10センチ手前まで自動で近づき、熟練の技能がなくても装着が可能に
  • 前編では、舞台となった徳島阿波おどり空港の関係者の話から効果を検証する

開催まであと2年を切り、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックに向けての準備が本格化してきた。いま以上のインバウンド(訪日外国人旅行)需要が見込まれるが、空港は現場スタッフの人材不足や離職率の高さといった課題を抱えている。この課題解決の一助となるべく、とある地方空港でAIを搭載した航空旅客搭乗橋(Passenger Boarding Bridge、以下PBB)の自動装着システムの実験が行われ、実用化にこぎ着けた。

航空旅客搭乗橋の自動装着システム

空港業務の現場からも出始めたAIやロボットへの期待

インバウンドは増加の一途をたどっている。日本政府観光局の発表によれば、2018年6月の訪日外国人旅行客数は、前年同月比15.3%増の270万5千人。上半期の比較でも前年同期比15.6%増となり、2018年に入ってからの半年間で1589万9千人もの外国人旅行客が日本を訪れている。

国の掲げた目標が「2020年に4000万人」であることを考えると、2年後には現状ペースのおよそ1.25倍の旅行客が日本にやってくることになる。今や「おもてなし」は海外にも知れ渡った日本の心であり、世界の中でも高い定時運航率を誇るプライドもある。しかし、玄関口となる空港では、急増するインバウンドにどのように対応していくべきかに頭を悩ませている。空港業務を支えるスタッフの人材不足がその理由である。どの空港も、手一杯の状況なのだ。

(出典) 国土交通省 観光庁HP 「明日の日本を支える観光ビジョン―世界が訪れたくなる日本へ―」(平成28年3月30日)

状況を打開しようと、国土交通省は「航空イノベーション推進官民連絡会」を設置。CIQ(税関、出入国管理、検疫)・保安・搭乗の手続きや導線の効率化を目指す「FAST TRAVEL」に加え、地上支援業務の省力化・自動化の推進に乗り出した。

(出典) 国土交通省 「(参考資料)航空イノベーション推進官民連絡会について」

さらに現場の従事者も効率性向上を求めている。航空関連産業最大の産業別労働組合である航空連合が全国の空港地上職に聞いた意識調査によると、約6割(n=1195人)が「空港の仕事現場へのAI・ロボット導入」に賛成の意向を示した。その理由としては「現場をより効率化して就業環境やサービスを改善したい」「人材不足で負担を感じるので現状を改善したい」「ヒューマンエラーを防止したい」などが挙がる。

(出典) 航空連合 「航空連合調べ 全国の空港地上職1300名による 空港現場で働く意識調査~詳細版~2018年5月実施」

いずれにしろ、高水準の旅客サービスを維持しながら旅行客に快適な思い出を提供するためには、何かしらのブレイクスルーが必要な段階に来ている。そこでPBB大手の新明和工業がパナソニック ソリューションテクノロジー(以下パナソニック)とともに、AIを活用したPBB自動装着システムを開発。航空機のドアのわずか10センチ手前まで自動で移動する仕組みを完成させた。

だが、その道のりは平坦ではなかった。2015年10月から徳島阿波おどり空港を舞台に長期にわたる実証実験を重ね、ようやく本運用を開始。この実績が認められ、2019年には成田国際空港とシンガポール・チャンギ空港への本システム導入が決定している。

自動装着システムを搭載した航空旅客搭乗橋(徳島阿波おどり空港)

今回の社会デザイン研究は、前後編にわたり紹介していく。まず前編は、空港運営会社、航空会社、地上業務受託会社の3者の視点を通じて「オペレーションの自動化によって生まれたポジティブな変化」を浮き彫りにしていこう。