<この記事を要約すると>

  • 2025年までに15兆円市場を目指すなど、かつてないほどスポーツに注目が集まる
  • 一方でスタジアムやアリーナの時代に即したスマート化が課題となってきた
  • 課題解決に向け、パナソニックとぴあが共同で“チケッティングの電子化を通じたスタジアムでの体験価値向上”の実証実験に着手
  • 来場者、運営者・主催者、スポンサーがお互いに満足できるサービスプラットフォームの完成を目指す

ラグビーワールドカップ2019、東京2020オリンピック・パラリンピックなどメガスポーツイベントが続く日本。スポーツインフラの中核となるスタジアムやアリーナを舞台に、パナソニックとぴあが共同で“チケッティングの電子化による体験価値向上”への取り組みに着手した。そこには、テクノロジーがもたらす新たな世界観が凝縮されている。

スポーツ産業の成長には価値の最大化が不可欠

いま日本では、これまでになく「スポーツ」が注目を浴びている。内閣府による「日本再興戦略2016」ではスポーツ産業を成長市場と位置づけ、2025年の市場規模目標を15兆円と定めた。これは2015年のおよそ3倍強の数字である。弾みをつけるかのように、来年からはラグビーワールドカップ2019、東京2020オリンピック・パラリンピック、ワールドマスターズゲームズ2021関西と国際的なメガイベントが続く。

参考:内閣官房日本経済再生総合事務局「日本再興戦略2016 これまでの成果と今後の取組」2016年6月

市場が成長するということは、これまで以上に多くの人がスポーツに触れることを意味する。国の方針にもあるが、そのためには「スポーツの価値の最大化」が鍵を握る。価値を最大化する上で最も親しみやすい接点の1つはスポーツ観戦だろう。伝統ある野球を筆頭に、サッカー、バスケットボール、ゴルフ、ボクシングなど日本にはプロスポーツが数多く存在し、シーズンを通して本格的な競技を楽しめる環境が整っているからだ。

あとはどのようにして“数段のステップアップ”を実現していくか。プロモーション強化や幼少期からの啓蒙といった従来の方法を地道に行うことも重要だが、最近では会場であるスタジアムやアリーナの時代に即したスマート化も取り沙汰されている。効率化を支援するデジタルテクノロジーを採用することにより、来場者はアナログでは不可能だった新世界を体験することができるようになる。

そこで生まれた取り組みが、今回紹介するサービスだ。パナソニックがチケッティングサービスの雄であるぴあとパートナーシップを組み、ガンバ大阪の協力を得て “チケッティングの電子化を通じたスタジアムでの体験価値向上”に向けた大規模な実証実験を行う。

舞台は2018年11月24日、パナソニック スタジアム 吹田で開催されるガンバ大阪vs V・ファーレン長崎の一戦。この取り組みが生まれた背景とソリューションの概要、その先に目指す未来について担当者に話を聞いた。

11月24日に行われる実証実験の目的

チケッティングの電子化を軸にした壮大な「スタジアムサービスプラットフォーム」

場合によっては数万人も集まるスポーツイベント。その中でスタジアムが抱える課題は共通する。来場者にとってはスムーズな入退場、場内でのグッズや飲食物購入の混雑緩和などが挙げられる。スタジアム運営者・主催者にとっては、新規設備投資の難しさ、集客のための企画力向上、スポンサー拡大に向けたマーケティング・営業力強化などが悩みの種だ。

こうした課題解決に向け、パナソニックとぴあは最初のアクセスポイントとなる“チケット”に着目した。ぴあの大下本直人氏は、プロジェクトのきっかけをこのように語る。

「もともと我々は、パナソニックの端末を利用して、Jリーグのクラブ向けに非接触ICカードを用いた『ワンタッチパス』という入場認証と観戦履歴管理のデジタルソリューションを提供しています。そのスキームを発展させ、スタジアムが抱える課題に対して新しい提案をしていきたいとの思いから始まりました」(大下本氏)

ぴあ株式会社
ライブ・エンタテインメント本部
スポーツ・ソリューション推進局
ファンマーケティング部 部長
大下本 直人氏

続いてパナソニックの多田羅浩昌氏は、発想の原点をこう振り返る。

「今回はすべてのチケットを電子化する試みです。チケット販売の起点からスタジアム内でのタッチポイントまでの情報を上手く組み合わせることで、これからのスタジアムをどう変えていけばいいのか、来場者にどんなサービスを提供すればいいのかといったヒントを探っていきます。その結果をフィードバックすれば、顧客価値を最大化できると考えたのです」(多田羅氏)

パナソニック株式会社
東京オリンピック・パラリンピック推進本部
戦略企画部 主幹
多田羅 浩昌氏

この取り組みを「スタジアムサービスプラットフォーム」と名付けた。具体的に実証実験当日の流れを見ていこう。まず紙チケットの来場者が、チケットを入場ゲート付近の特設コーナーで非接触型のウエアラブル型の電子チケットと交換する。それ以外はICカード年間パス、QRコード対応の紙チケット年間パス、スマホチケット(QR)で入場するため、ここで全員が電子化されることになる。

次にスタジアム設備に頼らない対策として、可搬性の高い小型端末でチケット情報読み取りを一元化。堅牢性に優れたパナソニック製「タフブックFZ-N1」を採用し、ゲート認証、チケットチェック、クーポン配布やプレゼント抽選会などの各種アクティビティ、座席へのルート案内などの読み取りを来場者のデバイスを選ばずに集約する。この機動力の高さにより、施設側は電子化に向けてぐんと導入のハードルが下がることになる。

ヤマ場となるのが、マルチなキャッシュレスサービスの提供である。2016年に開場したばかりのパナソニック スタジアム 吹田はスタジアム内の店舗がすべての電子マネーをサポートしていることもあり、もともとキャッシュレス化が進んでいる。しかし、今回配布するウエアラブル型の電子チケットは国内ではまだ事例が少ないクレジットカードのタッチ決済(NFC決済)の仕組みを採用しており、まるでスマートウォッチでタッチするようにスタジアム内の店舗で購入ができる。多田羅氏は、こうした斬新なユーザーエクスペリエンスもキャッシュレス行動を後押しすると見ている。

パナソニックとぴあが実現する『新たなスタジアムサービス』
(動画)実証実験 チケッティングの電子化で拡がるスタジアムサービス