最近目に付くのが、お湯を注ぐだけで出来上がる一人鍋やパスタ、カツの玉子とじなど、意欲的なフリーズドライ商品だ。フリーズドライでここまでできるの? と驚いた人は多いのではないだろうか。味噌汁やスープを中心に毎年、市場を拡大しているフリーズドライ食品は日本の食卓に浸透し、食文化そのものを大きく変えたとも言える。こうしたフリーズドライ食品はどのように作られ、今後どのように変化していくのか、その現状と今後を占った。

意欲的なフリーズドライ商品が目に付く。写真はお湯をかけて出来上がった「チキンカツの玉子とじ」(写真:アサヒグループ食品)
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フリーズドライが日本人の食を大きく変えてきたことに異論を挟む人は少ないだろう。

実際にフリーズドライ食品の歴史を振り返ってみると、それがよくわかる。

フリーズドライ製法の名が一般的になったのは、1960年代のインスタントコーヒーからだ。70年代初頭には「違いのわかる男」のCMキャッチフレーズで「ネスカフェ ゴールドブレンド」が一世を風靡。それ以来、インスタントコーヒーの概念が一変したことを覚えておられる方もいるだろう。さらに、ふりかけ、お茶漬けの素、カップ麺の具材と日本の食卓に上ってきたフリーズドライ食品は多い。ここ数年は、お湯を注ぐだけで本格的な味が楽しめる味噌汁を中心に、本格志向のフリーズドライ食品が人気を集めている。完全に日本の食卓に定着した感がある。

広がるフリーズドライ商品の守備範囲(写真:高山 和良)
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年々売上を伸ばすアマノフーズ

フリーズドライ食品の市場は、個食化が進み、共働き世帯の増加から料理の時短を求める風潮とも相まって、年々拡大を続けている。食品POSデータの収集・分析で知られるKSP−SP社が全国の食品スーパー約530店舗から収集した販売情報データベースによると、フリーズドライ食品の市場は2012年から2016年の4年間で約1.8倍に拡大し、フリーズドライの味噌汁に至っては4年間で約3倍にも市場を広げている。

実際に、ブロックタイプの味噌汁を主力商品として売上を伸ばし、今ではフリーズドライ食品のトップブランドとなったアマノフーズ(旧天野実業、2017年7月に経営統合によって現在はアサヒグループ食品)も毎年その規模を拡大している。

伸長するフリーズドライ製品
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フリーズドライの市場は毎年着実に伸びている。フリーズドライ味噌汁は4年で約3倍に、フリーズドライ食品全体でも4年で約1.8倍に拡大。グラフは、株式会社KSP-SPのKSP-POSデータによるもの(グラフ提供:アサヒグループ食品、データ提供:KSP−SP社)
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アマノフーズの売上
フリーズドライのトップブランド「アマノフーズ」の売上は年々拡大している。グラフは、旧天野実業とアサヒグループ食品アマノ事業本部の店頭商品の売上高推移。年平均で見るとこの数年、対前年比18%で増えている(提供:アサヒグループ食品)
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基本となる技術はシンプル

フリーズドライ食品製造というジャンルは、凍結庫や真空乾燥のための巨大な装置が必要となるため、おいそれと参入できるものではないが、フリーズドライの基本技術そのものは比較的シンプルなものだ。一言で言えば、出来た料理を低温で凍結させ、真空乾燥容器の中で水分を抜く、技術ということになる。これに関しては、ほぼ確立したものだ。

実際には、料理の味や風味を保つためにどんな素材をどのように調理し、それをどのくらいの温度でどれくらいの時間乾燥させていくのか、また、保存性や安全性を担保しながらどれだけ美味しい商品に仕上げるかといった細かい工程は各メーカーのノウハウであり、腕の見せ所になる。

さらに、これまでにフリーズドライ化された料理や食材は限られたものであり、まだフリーズドライ化されていない料理・食材の方が圧倒的に多い。このまま市場が拡大していけばニーズは高まり、多岐に渡ってくる。どんな商品を出していけるか、大きな余地と可能性を秘めた食品ジャンルだと言える。

アマノフーズのフリーズドライ味噌汁の作り方。料理や具材によって、時間や温度など細かい工程は違ってくる。この技術によって、料理の持っている風味や栄養素をあまり損なわずに、お湯をかけるだけで復元できる味噌汁ができる(提供:アサヒグループ食品)
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