「エシカルフード」に新しい流れが起きようとしている。「エシカル」とは、「倫理的」「道徳的」という意味。エシカルフードといえば、途上国で生産されるコーヒー豆を公正(フェア)な貿易によって調達、提供する「フェアトレードコーヒー」などを想起する人が多いだろう。そうしたなか、2017年9月に創業した「dot science(ドット・サイエンス)」は、農業や漁業の現場で、大きさや見た目によって規格外とされ、廃棄されてしまう「フードロス」の問題に真正面から挑んでいる。本来は捨てられるはずだった食材を使い、さまざまなエシカルフードを開発、市場に送り出している。

日本のみならず世界各国から集まった食材が所狭しと並ぶ伊勢丹新宿本店の地下食料品売り場。今年の3月7日から20日まで、生鮮食品を扱う一角に異色の商品が並んだ。商品ラベルに大きく書かれた文字は「ETHICAL SEAFOOD CHALLENGE(エシカルシーフードチャレンジ)」――。本来は流通せず、廃棄される運命にあった魚介類を使用したソーセージだ。

2018年3月7日~20日に伊勢丹新宿本店の地下食料品売り場に出品された「シーフードフランク」。宮城県三陸地方で獲れた“規格外”のホタテやカキを主原料にして作られている(写真:編集部)
[画像のクリックで拡大表示]

「エシカル」とは、「倫理的」「道徳的」という意味で、近年、環境や社会へ配慮をした活動やモノを形容する言葉として使われ、注目を浴びている言葉だ。消費から投資まで、欧米では、幅広い分野で「エシカル」であるという視点が行動基準として重要になってきているが、日本ではまだ認知度が低い。

「ETHICAL SEAFOOD CHALLENGE」は、「dot science」によるプロジェクト。「dot science」の理念は、理想の「食」の未来像を描きながら、食の領域の課題解決に向けたビジネスを展開すること。その理念の下、「海のフードロス」の課題解決のために開発したのが、ソーセージ「シーフードフランク」なのだ。

「dot science」を立ち上げたのは、異分野で活躍する3人。ヤフーでリスティング広告のコンサルティング業務に従事した後、独立したマーケッターである小澤亮氏と、農学を専門とし研究開発を担当する木村龍典氏、それから、東京・白金台のフレンチレストラン「TIRPSE(ティルプス)」でシェフを務める料理人の田村浩二氏だ。

左から、木村龍典氏、田村浩二氏、小澤亮氏。「ETHICAL SEAFOOD CHALLENGE」のキャンペーンを実施した伊勢丹新宿本店の地下食料品売り場で(写真:編集部)
[画像のクリックで拡大表示]

規格外のホタテやカキを生かした「シーフードフランク」

「dot science」が取り組んでいる「ETHICAL SEAFOOD CHALLENGE」のきっかけとなったのは、石巻の若手漁師集団「フィッシャーマンジャパン」の漁師たちと出会い、「海のフードロス」の問題を知ったことだった。単に形が悪い、小さいなど“規格”に合わないという理由で流通ルートに乗らず、廃棄される魚介類がとても多いのだという。例えば、コンブ(昆布)。コンブの着床部は色が悪いだけで味は他の部位と変わらないにもかかわらず、「フィッシャーマンジャパン」が引き揚げたものだけでも年間数十トンも廃棄されていた。

コンブを引き揚げるフィッシャーマンジャパンの漁師、阿部勝太さん。フィッシャーマンジャパンだけでも年間数十トンものコンブが廃棄されているという(写真提供:dot science)
[画像のクリックで拡大表示]
「シーフードフランク」の原料となる“規格外”のホタテ。味や栄養は、市場で購入するものと比べてまったく遜色ないにも関わらず、大きさや見た目の問題で廃棄されてしまう(写真提供:dot science)
[画像のクリックで拡大表示]

「海のフードロス」を高級食材として生まれ変わらせる――。冒頭で紹介した「シーフードフランク」はこうした発想で開発された。もちろん、社会的貢献度は高くても、おいしくなくては売れない。「TIRPSE」の田村氏はフレンチシェフとしてユニークなレシピを開発、味が淡白になりがちなフィッシュソーセージに、豚肉のようなジューシーさと豊かな食感を与えるための工夫を凝らした。

フードロスが問題となっている規格外のホタテやカキをベースとなる肉の部分に使用し、つなぎには脂がたっぷりのった銀鮭のハラスを用いることでジューシーさを加味した。さらに、コンブの未利用部分を刻んで入れ込むことでシャキシャキした食感を演出した。製造を委託したのは、創業150余年の小田原のかまぼこ店『鈴廣かまぼこ』。その高度な魚肉加工技術によって、本来の食材の力を生かしたフィッシュソーセージをつくることができたという。

「ETHICAL SEAFOOD CHALLENGE」は第2弾、第3弾を現在構想中。「付加価値の高い商品を開発することで、大量に魚を取らなくても、漁業に関わる人が生活していける環境の構築を目指しています」と田村氏は語る。

[画像のクリックで拡大表示]
「シーフードフランク」(写真提供:dot science)
[画像のクリックで拡大表示]