顔認証システムやAR(拡張現実)、ビッグデータ、ロボットなどの技術が「食」の世界を変えようとしている。外食産業の人手不足、消費者の健康増進、咀嚼や嚥下に不自由のある人のバリアフリー化といった様々な課題の解決につながる可能性もある。まずは、すでに実用化されつつある各種の技術をうまく組み合わせた近未来のレストランをのぞいてみると……。

レストランのエントランスに4人連れのお客が入って来る。夫婦と高校生の息子、そして祖母という家族構成だ。

「タカハシ様。お待ちしておりました」

(写真:WavebreakmediaMicro - Fotolia)

出迎えた眼鏡の支配人は4人を客席に案内すると、一人ひとり名前で呼びかけながら席を勧めた。実はこの支配人は今週からこの店で働き始めたばかりで、この4人を案内するのも今日が初めてだったのだが……。

同じメニューを海外の家族と同時に楽しむ

案内された席は、4人がちょうど座れるテーブルの倍のサイズだった。しかし、よく見ると本当のサイズは4人掛けの広さで、半分から向こうは白い壁に投影された映像だった。やがてその映像には、夫婦の長女家族4人が現れて、こちらと同じように着席した。

「久しぶり」「元気そうね」

長女の家族はケアンズ在住。これから海をまたいで、8人で一緒に会食をするのだ。

さきほどの支配人が現れると、こちらとケアンズの両方のテーブルの表面にメニューが投影された。支配人は一人ひとりから注文を聞きながら、「何を食べようか」と悩んでいる家族には「たとえば、これはいかがでしょう」と一品を推奨してくる。「ああ、それは私が好きなもの。どうして好みがわかったのかしら」と反応が返ってきた。

出てきた料理の一つひとつが家族らに好評だった。咀嚼が難しい祖母もおいしそうに食べている。父親と長女の夫が頼んだ料理は同じもので、日本とケアンズとで全く同じ仕上がりの料理がほぼ同時にサーブされた。父親と夫が味のよさを一緒にほめて盛り上がっているのを見て、長女だけでなく、家族全員が驚き、笑った。

メーンの料理を食べ終わってすべての食器が下げられると、テーブル上に、以前この8人が観光旅行で訪ねた公園の全景が映し出された。やがて、その中の8カ所のアトラクションや小公園のミニチュアが、家族それぞれの前に置かれた。どれも精巧で美しい模型に見えたが、よく見ると、それらは菓子で出来ている。両テーブルの間の空中に花火が投影され、全員でそれを眺めながら、デザートとコーヒーを楽しんだ。