食生活が様変わりする中で、日本の魚の消費量は年々少なくなっているが、今も新鮮な天然の魚は日本人にとっては何よりのご馳走だろう。しかし、近い将来、日本人の食卓に上がる魚のあり方が大きく変わるかもしれない。世界では水産資源の保護の観点から、大手小売が持続可能(サステナブル)な漁業による水産物しか取り扱わないと次々に宣言し、実際の行動に移しているのだ。

世界でも指折りの“フィッシュイーター”として知られる日本人の魚介に対する思い入れは深い。鮮度にこだわり、天然物にこだわり、獲れた場所にもこだわる。ブランド魚と言われるものには必ずと言っていいほど「天然」という文字が躍り、獲れた場所についても明示され、それがブランド価値を高めることにつながっている。「大間のまぐろ」「氷見のぶり」「関さば」などがそのいい例だ。

しかし、欧米で日ごと高まる資源保護の気運が、近い将来、こうした日本のブランド魚のあり方を大きく変えるかもしれない。水産資源の保護を最優先する欧米の動きが、われわれ日本人の想像をはるかに超える大きな潮流になっているからだ。特にヨーロッパでは資源量や環境に配慮した「サステナブル(持続可能)な漁業」で獲られたことを示す「MSC認証」を取得した天然魚介や、環境に負担をかけず健康に育てられたことを示す「ASC認証」を取得した養殖水産物など、“エコ”な魚介がごく当たり前のものとなっている。

資源を保護する「サステナブル(持続可能)な漁業」のあり方(資料:イオンのサイトより引用)

「MSC認証」は天然の水産物に対するもので、「海洋管理協議会」(Marine Stewardship Council、以下、MSC)というロンドンに本部を置く非営利団体が定めた基準に則った漁業に与えられるものを指す。具体的には、以下の3つの原則を守っている漁業に対して与えられる。


1)過剰な漁獲を行わず資源を枯渇させないこと(「資源の持続可能性」の原則)
2)漁場となる海の生態系やその多様性、生産力、機能を維持できる形で漁業を行うこと(「生態系への影響」の原則)
3)国際的、または国内、地域的なルールを尊重した漁業管理システムを有し、持続的な水産資源の利用ができる制度やインフラ、社会的な体制を作っていること(「管理システム」の原則)

「MSC認証」取得を意味するマークは「海のエコラベル」とも呼ばれ、この青いマークが付いた水産物は、厳しい基準に則って資源を保護し、環境にも人にも優しい「持続可能な漁業で獲られた」天然の水産物である証となる。

「MSC認証」取得を意味する「海のエコラベル」。このマークを商品に付けた業者は売上の0.5%をMSCに支払う

MSC認証制度には、漁業者に対する「MSC漁業認証」と、流通・加工・小売業者に対する「MSC CoC認証」(CoCはChain of Custodyの略)の2つがあり、漁業の現場から消費者までのサプライチェーンの中で、漁業者がMSC漁業認証を取得し、流通・加工・小売業者がMSC CoC認証を取得する。商品に「海のエコラベル」を付けるためには、漁業者からラベルを付ける業者までのサプライチェーンに属する全業者が認証を取得している必要がある。

漁業者と消費者を結ぶサプライチェーン。漁業者から商品に「海のエコラベル」が付ける業者までのチェーンに属する業者はすべて認証を取得しなければならない(資料:海洋管理協議会(MSC))

もう一方の「ASC認証」は、この養殖版とも言えるもの。オランダに本部がある「水産養殖管理協議会」(Aquaculture Stewardship Council、以下、ASC)の基準に則った養殖業に対して与えられる。

MSCとASC、この二つの認証は、厳しい基準をクリアしたところに対して第三者機関が与えるものだ。どちらも世界中の関係者から大きな注目を集め、その数を増やしている。MSCプログラムディレクターの石井幸造氏は、「2016年12月時点で、世界で315の漁業がMSC認証を受けていて、審査中の漁業が76。MSC認証を取得した漁業による年間の総漁獲高は約1000万トンと世界の天然漁獲高の約1割になります」とMSC認証の広がりを説明する。

海洋管理協議会(MSC)プログラムディレクターの石井幸造氏(写真:高山和良)