前回に引き続き、MSC認証の動きを紹介する。いま世界では、サステナブルな魚介であることを示す「MSC」や「ASC」という認証制度が普及し、世界標準になろうとしている。先行する世界に対して日本は大きく遅れを取っている状況だ。そうしたなか、日本ではイオングループがMSC・ASC認証導入の動きを牽引している。今回は、同グループの動きを中心に日本の水産業・小売の対応をレポートし、日本の魚の未来を占う。

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日本では、イオングループがMSC・ASC認証に積極的に取り組み、水産物のサステナブル調達を進めている。小売業界でサステナブル調達を牽引するトップランナーであり、水産業界もリードする役割を担っている。

イオンの売り場にはMSC認証・ASC認証を受けた商品が並ぶ。商品のパッケージにはそれぞれの認証の証となるマークが表示されている(写真:イオンリテール)

イオンが取り組み始めた時期は早く、2006年には、当時のイオン株式会社がMSC認証商品の販売を始めている。その後もサステナブル調達に力を入れ、2014年2月には「イオン持続可能な調達原則」というグループ全体の調達方針を掲げ、水産物のサステナブル調達に向けて総力を挙げて取り組んでいくことを表明した。同年3月にはASC認証商品の販売も開始。同グループの総合スーパー事業の中核を担うイオンリテール株式会社を中心に、MSC・ASC認証商品の展開に力を入れている。同社が現状取り扱うMSC認証水産物は16魚種、ASC認証が5魚種、合計で45品目となっている。

イオンリテールの水産物を統括する、食品商品企画本部 水産企画部長の松本金蔵氏は「MSC・ASC認証商品の売上は2015年に比べて1.5~1.8倍に伸びました。2020年にはイオンリテールの水産物の20%をMSC・ASC認証商品にすることを目指します」と語る。

2016年2月期の決算資料で見ると、イオンリテールの年間総売上高は1兆9905億円、そのうち食品部門だけでも1兆741億円にも上る。ここから推測できる水産物の売上も巨大な規模になる。イオンリテールがMSC・ASC認証商品にかける意気込みのほどがわかる。

イオンリテール食品商品企画本部
水産企画部長の松本金蔵氏(写真:高山和良)

同社では2015年11月から、MSC・ASC認証商品の認知度を上げていくために、これらの認証水産物を集めた専門コーナー「フィッシュバトン」(FishBaton)の展開を急いでいる。いわば認証商品を一堂に集めて消費者にアピールしていくイオングループとしての戦略的な情報発信基地だ。設置店舗は2016年12月16日時点で43まで増えた。イオンリテールでは、今後も新店・改装店舗を中心に旗艦店にこのコーナーを設置し、「2020年には100店舗に設置することを目標にしています」(松本氏)。

認証を取得した商品を一堂に集めたイオンの「フィッシュバトン」コーナー(写真:イオンリテール)

イオンがサステナブル調達にかける思いには強いものがある。「これをやらなくては日本の水産業は立ちゆかなくなるという思いがある。水産物の売上は年々落ちてきているのが日本の実態。世界を見ると水産物の消費は右肩上がりとなっている。資源の枯渇についても肌で感じている。グローバルな基準で美味しい商品を消費者に孫の世代まで届けたいという思いからこういう経緯に至った」と松本氏は語る。

こうした意気込みは、「イオン持続可能な調達原則」に調達方針と取り組み内容をはっきりと明文化し、社員も消費者も誰でも読めるようにしている点にも表れている。会社の規模が大きくなるほど調達原則の明文化は重要になる。松本氏は「そうしないと会社全体としては行動できません。われわれの調達原則にはワシントン条約やMSC認証についてもきちんと明文化され、行動レベルにまで落とせる。誰が水産物の責任者になってもその通りにやらなくてはいけない。ぶれないのです」と言い切る。調達方針を明文化して公表することは、消費者に向けての強いメッセージにもなり、当然アピールにもなる。