Amazon Goのように商品を持って帰るだけで購入できる買い物体験は、消費者だけでなくリアル店舗を運営する小売業者にも刺激を与えた。小売業者はスーパーマーケットでAIを活用し、消費者に新たな買い物体験を提供し、自らの業績を上げるビジネスモデルも構築しようとしている。

ARなどを使ったバーチャル試着、無人レジ/レジなし、手ぶら決済。前回は未来型の小売店舗における新しい買い物体験を紹介した。今回は、トライアルカンパニーとモノタロウが、それぞれ国内で実際にAIなどを活用して営んでいる店舗での取り組みを紹介する。単純に顧客に新しい体験を提供するだけでなく、顧客の動きをとらえ、サービス改善にも役立てようとしている。

ショッピングカートの新サービス採用でセルフレジを実現

Amazon Goのようなショッピングスタイルは、利用者にとってはメリットが大きいが、小売業者側のコスト負担はまだ大きい。一方で、買い物客が自分で商品のバーコードを読み込ませ、支払いまでを行うセルフレジは、小売業者にとっては人件費が削減でき、レジの混雑がなくなって効率化できるなどさまざまなメリットがある。

とはいえ、コンビニや駅のキオスクでの買い物のように購入商品が少ない場合はいいが、スーパーマーケットでの買い物のように購入商品の数が多いと、自分でバーコードを読み込ませる手間が面倒になり、利用者から敬遠される。そのため、バーコードの読み込みは店員が行い、支払いだけセルフで行うセミセルフレジ方式を採用するスーパーが増えてきた。

自分で商品のバーコードを読み込ませるセルフレジ方式でも、そこに何かお得なサービスがあれば消費者からも歓迎されるようだ。福岡市を中心にスーパーマーケットを展開するトライアルカンパニーは、2018年2月に福岡市東区に24時間営業の「トライアル アイランドシティ店」をオープン。そこに、700台のAIカメラを導入すると同時に、「スマートレジカート」と連動させたセルフレジのシステムを導入した(写真1)。ここで、AIを活用した未来の小売り店の姿を模索している。

スマートレジカートは、ショッピングカートにスキャナーとタブレット端末を組み合わせたもの。専用のプリペイドカードをスキャナーにかざしてログインし、商品を購入する場合も、棚などにある商品を取ってカートに入れる際に、買い物客自身がスキャナーに商品をかざし、バーコードを読み込ませる。買い物を終えたら、会計エリアに行ってタブレットの会計ボタンを押せば精算できる。通常のレジに並ぶ必要はない。今のところは、スキャンしていない商品がないか店員が最終チェックし、チェックが済んだら自動的に精算される仕組みだ。

トライアルはスマートレジカートのディスプレイに、利用者が購入した商品の情報を基に、次に買いそうな商品を推測してさまざまなクーポンを表示させる。表示されるクーポンの選択は、顧客のプロファイルや蓄積された購入履歴を参照して、AIが自動的に判断する。「買い物終了後に有効になる従来のクーポンと違って、発行されたクーポンをすぐに買い物に生かせるので、利用者の満足度は高い」(トライアルホールディングス 取締役副会長 西川晋二氏)という。

(写真1)利用者が自分で商品を登録する「スマートレジカート」
商品を購入すると、ディスプレイにおすすめ商品などのクーポンが表示されその場で使用できる。