中国やアジアを中心に、QRコード決済をはじめ、急速にキャッシュレス決済が広がっている。ただ、これはまだ序章に過ぎない。街を歩いていて、店先で気になった商品を見つけたら持ち帰るだけ。レストランでの食事も食べ終わったらそのまま店を出るだけ。未来の社会では、財布やクレジットカード、スマートフォンすら使う必要がない、そんな決済が日常的になった社会が実現しそうだ。

年々増加する海外からの観光客。加えて、2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、そして2025年開催が決まった大阪国際博覧会など、国際的なビッグイベントが続き、ますますインバウンド需要への備えを急がなければならない状況になっている。その一つが、キャッシュレス決済を浸透させることだ。日本では、現金の信用度が高いことに加え、店舗側にかかる決済手数料などが安くないことから、今でも現金決済が主流になっている。Suicaを中心として、コンビニエンスストアや交通関連の経済圏ではキャッシュレスはかなり浸透してきた。それでも、インバウンド対応を考えると、クレジットカードを含むキャッシュレス決済をもっと浸透させていかなければならないことは確かだ。

キャッシュレス決済は、面倒な外貨両替の必要がなくなる海外旅行者だけでなく、国内の消費者にもメリットをもたらす。コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどのレジで精算をする際には、わざわざ財布から現金を数えて取り出す手間はなくなるし、そういった時間が短縮されることで行列で待たされる時間も減るだろう。誰もがあまり現金を所持しなくなれば、強盗や空き巣などの犯罪も減る可能性が高い。店舗側にとっても現金の収集や集計などの業務を減らすことができ、店内に現金を保管したり銀行に入金する必要がなくなるので、盗難のリスクが減り業務を簡素化できる。

現金をまったく使わない完全なキャッシュレス社会が実現すれば、現在大量の現金を保管、管理している銀行にとっては、店舗の中に巨大な金庫を置く必要がなくATMの設備も不要になる。全国津々浦々に置いているATMの維持管理費がなくなるだけでも、大幅なコスト削減になるだろう。国としても、貨幣という物理的な「お金」を製造、流通させるために必要な税金が削減できる。さらに、現金は匿名性が高く使用履歴が残らないことから、不正な蓄財、脱税、マネーロンダリングなど犯罪の温床になってきたが、完全なキャッシュレス社会が実現すればそういった課題にも対応できる。

まだ時間はかかるが、国内も、そういったキャッシュレス社会に向かっていく。その究極ともいえる形は、生体認証システムを活用して、クレジットカードもスマートフォンも使わずに、場合によってはその操作さえせずに支払いを済ませるキャッシュレス決済である。

生体認証で自分の体をクレジットカードに

通常、クレジットカード決済では、カードが正しい所有者によって利用されようとしてるのかを確認するために店頭でサインやセキュリティコード入力を求められる。第三者による「なりすまし」を防ぐためだ。これを、もっと強固で使いやすいものにしようという取り組みが、生体認証との組み合わせである。コピー困難な生体情報とクラウド上に保管されたクレジットカード情報をひも付け、支払い者が確かにクレジットカードの所持者であることを確認できるようにする。これによって、外出時に財布やクレジットカードすら持ち歩く必要がなくなりそうだ。