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新学期を迎えて、気をつけたい子どものストレス

(2016/04/12)

 春ですね。皆さんのお子さんの中にも、入園・入学・進級、さらにお引越しなど、色々な転機を迎えていらっしゃる子もいることでしょう。

 「おめでとう!」と声をかけてもらえるので、おめでたいこと、喜ばしいことなのかな、とは思っても、子どもたちが素直に喜べるのかというと、様々なパターンがあるようです。
 心の中には様々な思いがあっても、表現する言葉を持たなかったり、心の中の複雑な葛藤を表に出せなかったり。子どもだから考えていない、子どもだから分からない、のではなく、本当は内に秘めた様々な感情があるのではないかと思います。

♪慣れ親しんだ場所に通えない寂しさ

 我が家の子どもたちは、皆、3月31日までお世話になっていた保育園から4月1日には小学校の学童保育に移る、というパターンを繰り返してきました。また、学童保育には小学校3年生までしか通えないため、小学三年生の3月31日までは学童保育に通っていたのに、4月1日からは通えなくなりました。これまで通っていた場所に、なぜ行けなくなったのか、どう説明されても、寂しさと切なさと納得のいかない感情と・・・入り混じっていたに違いありません。

 子どもだからといって、その辛さ、悲しさが大人の10分の一ということはないのです。この言葉を、私は先日松崎運之助先生の講演でお聞きして、なるほど、と思いました。子どもも子どもなりに、大人と同じように辛さや悲しさを受け止めているのですが、私たち大人と同じ形で表出することはないかもしれません。親の前では健気に振舞っているかもしれませんが、大きな環境の変化があるとき、下記のような行動がないかどうか、ちょっと気を付けてあげてください。

・親と一緒にいたがる、あるいは、一人になりたがり、部屋から出てこない
・添い寝をねだる、膝の上に座りたがる、抱っこをせがむ
・暗い部屋にひとりで行けないのでついてきて、という
・いつもは普通に扱うような本や教科書、ランドセル、おもちゃを放り投げたり、乱暴に扱ったりする

 「いつもと違うな」という親御さんの直感が、一番の基準です。
「あら?いつもはこんなこと言わないのに・・・」と思ったら、それは、新しい環境になじもうとする時の葛藤や奮闘の表れかもしれません。

♪子どもの話を聞く時間を・・・

 「どうしてそんなことするの?」「今まではできていたでしょ」と言いたくなる気持ちになりますが、「なんだか違うな」と思ったら、戸惑ったりイライラする気持ちを「転換期だから、当たり前だよね」という気持ちに置き換え、「どうしたのかな」「どんな気分なのかな」「心の中にむずむずするものがあるのかな」と話を聞く時間を取るようにしてみるといいかもしれません。

 オープンエンドの問いかけ(「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく、自由に答えさせる質問)では、なかなか言葉に出来ない子も多いでしょう。そんな時は、「お母さんも、小さいころ、入学式ではこんな気持ちになってね・・・」「新しいクラスに入るとき、ドキドキしたよ」など、子どもの思いを想像したり、ボキャブラリーの素材を提供したりしながら聞くようにするといいかもしれません。

♪環境の変化が子どもに与えるストレス

 私が、環境の変化に直面する子どものこころのケアについて学んだのは、震災直後でした、長女が小学校に入学するというとき、私はちょうど被災地と東京の自宅を行き来していたのですが、学童保育の指導員の先生が「長女の表情が硬い」と交換ノートに書かれているのを読んで、ハッとしたのです。自分は、被災地支援で心がいっぱいでしたが、長女も同じように大きな環境の変化と戦っていたのです。そのことに母親である私が気付いていなかったと猛反省しました。「大災害と子どものストレス(誠信書房)」という本で子どもの心理反応についての記載を読みながら、被災していなくても、新しい環境に移るという大きな変化に加え、母親がずっと家にいない日々を過ごしている長女の気持ちを考えていなかったと悔やみました。

 その後、今からでも遅くないかな、と願いながら、寝る前や登校前に、少しずつでも対話をするようにしました。複数の子どもがいる場合、一人の子だけと一対一の時間を取ることはなかなか難しいものです。今までバタバタした毎日だったのに、急に「話を聴かせて」というのもなんだか不自然です。いろいろ考えて、図書館に本を返しに行くときに一緒に歩いて行ったり、他の子どもたちを保育園にお迎えに行く前の数十分、二人だけで出かけたりしました。長女が学校であった事を話してくれると、とても嬉しくて、ホッとしました。

 どんな変化も、子どもは必ず乗り越えます。その時期に、静かな場所で子どもの目を見ながら一生懸命耳を傾け、「知っている子が一人もいないから、友達が出来るかどうか心配」「ほかの子はみんな知り合いどうしのように見える」など相手が話している言葉を聴き、言葉を繰り返し、ぎゅーっと抱きしめる、背中や肩をさするなど、子どもの表情が緩むようなことをしながら、ゆっくり、少しずつ、子どもの思いを想像してそばにいることが出来ればいいな、と思います。

 まだまだこれからも子どもの転換期は続きますが、この時期だけでも、忘れずに子どもの話を聴きたい、と、この季節になるといつも思います。

******** 吉田穂波(よしだほなみ)プロフィール

産婦人科医。元米ハーバード大リサーチフェロー。国立保健医療科学院主任研究官。日・独・英・米4カ国で5人を出産・子育てした経験もふまえ、ママこそ自分のカラダをもっといたわってほしいと思いながら、子育てと研究にいそしむ日々を送っています。

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