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食べることは生命力に直結

(2017/02/16)

食べることは生命力に直結

 社会派レシピスト、食の探偵団・団長、のサカイ優佳子です。

 先日、88歳になる義母が緊急入院し、一週間ほど口から食べものを摂れない日が続きました。容体が落ち着き元気になってくるにつれて、「お刺身が食べたい」「桃のシロップ煮が食べたい」と好きなものへの欲求が強烈に湧いてきていました。普段は少食の義母だし、栄養については点滴で足りているはず。それでも「しばらく経口摂取は不可」と言い渡されたのがとても辛そうでした。

 食べるという行為はただ栄養を摂取するだけではないのだなと、今回の義母の様子を見ていて改めて感じ、昔のことを思い出しました。

♪栄養は足りていても満たされない

 今は24歳になる長女が生まれて4か月になった頃、顔や首が糜爛状になりました。医者は「アトピー性皮膚炎ですね」と。当時まだアトピーと言う言葉はさほど知られておらず、一体娘に何が起こったのかすぐには理解ができませんでした。そして、卵、牛乳、エビ、カニ、タコ、イカ、鶏肉、牛肉の摂取を全て禁じられました。娘はもちろんですが、授乳している私も同様に。

宮崎のソウルフードと言われるらしい「栄養軒」のラーメン。24年前の関東には、豚骨ラーメンは未上陸。これがあれば、もう少し満たされたかも(笑)

 今まで当たり前に口にしていたものを禁じられると、無性に食べたい気持ちが湧いてくるのでした。除去食を続けていた2年間、食べることができるものももちろんたくさんあるわけですが、「ああ、美味しくて濃厚なアイスが食べたいなあ」とか「ジュワッとくるアツアツの鶏の唐揚げ!!」とか、「鶏ダシのラーメンの香りを思いっきり吸い込みたい!」、「ミディアムレアに焼いたステーキを噛み締めたい!」とか。妄想たくましくなってしまう自分に呆れることもありました。

 当時の私は、栄養は足りてはいてもどこか欲求不満を溜め込んで暮らしていたし、パワーもなかったように思うのです。6kg痩せました。

♪食べることでエネルギーが

 医師の許可が下り、ほぼ普通の食事が摂れるようになってから、新潟出身で塩辛い味付けのおかずで白米を食べるのが大好きな義母は「梅干しが食べたい」と言い出しました。塩だけで漬けた自家製の梅干しを届けると、白いご飯にのせて大事そうに一口ずつ口に運び、満面の笑みで「おいしいわー」と、それはそれは嬉しそうに食べていました。

 そして、その後驚くほどのスピードで元気を取り戻していきました。食べたいものを食べたい時に食べられるということが、いかに人のエネルギーに直結しているかを思い知らされるようでした。

♪食は五感で味わうもの

 昨今、栄養さえ満たせばいいと、サプリメントや簡易で便利な食品に頼る傾向はますます増えてきているように思います。でも食は五感で感じるもの。香りや見た目、音で食欲をそそられ、歯で噛み締め、口どけや舌触り、喉越しを味わい、ものによってはその音を感じ、鼻腔に抜ける風味をも味わう。

 口で食べることには、「栄養」といった理屈だけでは割り切れない何がしかの力があるように、その人の生命力に繋がっているように感じられるのです。当たり前に思っている「好きなものを食べることができるシアワセ」をたまにはちゃんと思い出さなくてはいけないなと思ったできごとでした。

お知らせ

サカイさんの著書「毎日食べたい乾物ヨーグルトレシピ決定版」(世界文化社)。

乾物をヨーグルトで戻すという食べ方を提唱したサカイさんならではの、とっておきレシピが多数紹介されています。肉や魚と合わせた主菜やスイーツ、朝食レシピまで毎日の食卓のヒントが載っています。

サカイ優佳子ホームページ : http://yukakosakai.net

DRYandPEACE(代表理事:サカイ優佳子)のホームページ:http://dryandpeace.com

********サカイ優佳子(さかい・ゆかこ)プロフィール 「五感を重視した食育ワークショップ『食の探偵団』を2002年より田平恵美とともに主宰。田んぼを残したいという思いから07年より米粉の利用法の提案を続け、11年からは『乾物は未来食』という思いから伝統的乾物の新しい使い方や、世界各地の乾物の知恵、料理法の研究を開始。DRY AND PEACEプロジェクト推進中。著書に『感じる食育 楽しい食育』『米粉ランチ』等。
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