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おばあちゃまたちの知恵、保存食の力

(2016/08/02)

 社会派レシピスト、食の探偵団・団長、のサカイ優佳子です。

♪被災の中で現れた田舎と都会の差

 先日、乾物を始めとする保存食をテーマに、山形を旅してきました。

 160年続くお麩屋さん、山間の土地で民宿を続けるご夫婦、料亭の女将さん、地元の食を継承しようと活動する薬剤師さん、Iターンの農家さんなどなど、たくさんの方にお話を伺ってきました。

 その中で出たお話。

「限界集落」と烙印を押された高齢者ばかりが住む村落。3.11の後、山形の街中に住むある人が心配して訪ねてみると、一人暮らしのおばあちゃまたちは皆公民館に避難してきていたのだそうです。

 どんなに心細い思いでいるだろうと思ったら、保存食を持ち寄り、山菜やキノコの煮物などがたっぷり並ぶテーブルを囲んで、それは楽しそうにおしゃべりしながらご馳走を堪能していたといいます。

 かたや、神奈川県に住むその方の息子さんは「スーパーに行っても食べものがない。コメをどうにか調達してくれないか」と電話してきたとか。交通網が遮断されていて山形からは送ることができず、親類縁者に片はしから連絡してどうにか福井の知人からコメを送ってもらうことができたのだそうです。

♪「僕たちのために、ありがとう」

 子どもが減って小学校も閉校してしまったという村落に住むおばあちゃまは、「11月から5月までは雪に閉ざされる土地だから、雪が解けた途端に保存食作りを始めるのよ」と話してくれました。塩漬け、乾物、そして今は冷凍も含めて。10年前、60代後半になって始めた農家民宿を今も一人で切り盛りしています。座っている時間がないのではないかというくらいお元気。

 学校がなくなる前、数日間の山村留学で訪れた小学生たちが、「1年間この村で暮らしてみたい」と申し出たことから、村落をあげて子どもたちを預かったこともあるそうです。「僕たちのために朝からこんなに料理してくれてありがとう」と言われるのがとても嬉しく、一緒に山に入り山菜をとっておかずを作ったり、お団子を作ったりと本当に楽しかった……と懐かしそうに語ってくれました。学校がなくなってしまった今は、もうそんなこともできなくなってしまったわけですが。

♪おばあちゃまの暮らしの知恵を取り入れたい

 おばあちゃまたちのようなマメで始末な暮らしは到底真似できるものではありませんが、そんな暮らしに触れることで考えさせられることはたくさんあります。

 モノが溢れているようでいながら実は危うい都会の食事情、行き当たりばったりの食事。その対極にある暮らし方。常に先を見越して調える食のあり方に触れ、ゆったりとした時間の流れの中で語らい過ごし、ほんの少しでも自分の暮らしの中に、彼女らの考え方や暮らしの知恵を取り入れていきたいと感じました。そんな旅、いろいろな人に経験してもらいたいな、と、旅企画、はじめます。

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サカイ優佳子ホームページ : http://yukakosakai.net

DRYandPEACE(代表理事:サカイ優佳子)のホームページ:http://dryandpeace.com

********サカイ優佳子(さかい・ゆかこ)プロフィール 「五感を重視した食育ワークショップ『食の探偵団』を2002年より田平恵美とともに主宰。田んぼを残したいという思いから07年より米粉の利用法の提案を続け、11年からは『乾物は未来食』という思いから伝統的乾物の新しい使い方や、世界各地の乾物の知恵、料理法の研究を開始。DRY AND PEACEプロジェクト推進中。著書に『感じる食育 楽しい食育』『米粉ランチ』等。
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