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「奨学金」をきっかけに未来を話し合う

(2017/01/10)

 大学や専門学校などへの進学時に奨学金を利用し、社会人になってから、自分で返済した経験を持つ人も多いと思います。「返せると思ったが意外に大変だった」という人や「返済が滞ったことがある」という人もいるでしょう。

 家庭の経済状況が苦しい世帯を対象に、返済の義務がない給付型の奨学金が新設されるなどの動きとともに、「奨学金」との、上手な付き合いかたを考えてみましょう。

♪住民税非課税世帯を対象に「給付型」奨学金新設

 12月19日、政府は2018年度から、住民税非課税世帯の学生(1学年2万人)を対象に、返済不要で利用できる「給付型奨学金」を給付する制度の発足を決めました。金額は月額2万~4万円。国が「給付型」の奨学金を手掛けるのは、今回がはじめてのことです。

 下宿などをして私立大学に通う学生、児童養護施設出身の人については、2017年度から先行して実施されます。児童養護施設出身の人については、入学金として24万円を別途支給します。

 2018年度の入学者となる現在の高校2年生には、春から学校を通じて募集をはじめ、学業が優秀な人、学業以外での活動で成果を上げた人などを高校が推薦する仕組みになるそうです。文部科学省は法改正を行い、学校向けの指針も発表します。

 奨学金と聞くと、まだ「もらえるもの」というイメージを持っている人もいるかもしれません。しかしそれは少数で、現在、多くの奨学金の中身はローン、借金と同じものが多いのが現状です。

 子ども自身が社会人になったとき、月々の給与から返済していかなければならなりません。

♪奨学金を肩代わりする企業、自治体も

 奨学金が若い社会人を経済的に圧迫している、という現状に対して、支援を行う企業や自治体もあります。

 例えば企業が学生向けに奨学金を出し、奨学金を利用した学生がその企業や関連会社に就職したら返済の義務がなくなるといったものです。

 福利厚生、人材確保のために、奨学金返済中の社員に、毎月一定額の手当を出す企業もあります。

地方の自治体の中には、その地域で就職を決めた学生に対して、奨学金の支払いを援助する制度を設けているところもあります。この場合「最低、●年間は勤務する」などの条件があります。

 人手不足や人件費の高騰などもあり、優秀な人材の確保のための手段ではありますが、働く側にとってもいい話であれば、奨学金を借りた後の「出口」として、情報を集めておいてもいいかもしれません。

 こうした情報は、インターネットで検索すると簡単に集めることができます。詳細は企業や自治体のウェブサイトを見る、実際に電話をかけて担当者に聞いてみてもいいでしょう。担当者にとっても、反響があるのはうれしいはずです。

 また成績優秀者を対象に、返済義務のない奨学金を設立する私立大学もあります。志望校にこうした制度があれば、挑戦してみてもいいですね。

♪奨学金は「未来の自分が払う」

 受験のときは、本人も家族も「志望校に入れるか」が一番の気がかりなので、お金については「入ればなんとかなる」と考えてしまいがちです。晴れて進学できたら、今度は「就職すれば何とかなる」となりがちです。

 しかし、仮にあこがれの会社に就職したとしても、自活して、さらに奨学金を返済していくためには、初任給では心もとないことは想像できます。

 奨学金には、返済するまでに長いタイムラグがあるので「返済のことをすっかり忘れていた」ということも起こりがちです。

 奨学金を受けているときは「未来の自分が払っている」という自覚を持つことが必要になります。でも逆に、そう自覚することで、お金の使い方についても意識的になり、自己管理が身についていくかもしれません。

♪長い人生、後で学歴を「付け足す」こともできる

 今は「新卒でいい会社に入社したから一生安泰」、とはとても言えないほど世の中が目まぐるしく動いています。がんばってきた人にはさらなるがんばりが求められますし、また、進学や就職で不本意な選択をしてきてしまった人にも、挽回のチャンスはあります。

 スキルアップのために会社勤めをしながら資格取得をする、通信制の大学や夜間の社会人大学院に通う人は、全く珍しくはありません。経済的な理由で進路を断念しても、いい情報を収集して選んでいくことで、学歴は「後から付ける」ことが可能です。

 「学費が足りない!」「奨学金の返済を忘れていた!」と後から慌てることは、ほかにあったかもしれない、よりよい選択肢を見逃してしまったということでもあります。

 今後起きるであろうことを予測し、計画を立てる。その中には「今は望む道は断念するけれど、お金を貯めて再開する」といったプラン変更も含まれるかもしれません。でも、長い人生でみたとき、最終的に「いい選択だった」と思えるように準備していけばいいのではないでしょうか。

 奨学金という選択肢を話し合うとき、こんな人生全般の話に広げてみてもいいのかもしれません。

  なお、新制度を受け、日本学生支援機構は「給付型奨学金などに関する電話相談窓口」を設置するとしています(平日、4月28日まで)。参考:新たな奨学金制度に関する相談窓口の設置について

********阿部祐子(あべ・ゆうこ)プロフィール

ecomomエディター、ファイナンシャル・プランナー(CFP)。知っておくと暮らしに役立つ、生活とお金まわりの情報をご紹介します。

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