Topics

『家事・仕事・人生のやりくり』トークショー(前編)

(2015/09/08)

今年6月、『家事、仕事、人生のやりくり〜時短』をテーマにしたトークショーが青山のスパイラルホールにて開催されました(日本財団主催)。コーディネーターを務めたのは、政策シンクタンクなどで活動し、女性活用や子育て支援にも力を入れる西田陽光さん。本誌編集長の村上もパネリストとして参加したこのトークショーでは、主夫芸人の中村シュフさん、連載「ジミ弁で行こう!」でもおなじみの田内しょうこさんを交えて、豊かで自分らしい暮らし方や働き方を選び取るためには……と「家事の見つめ直し」や「時短のコツ」をテーマに話が弾みました。その様子を2回に分けてお届けします。

総合コーディネーター西田陽光(以下、西田):かつては地域の中や学校、近所、職場や学校の先輩後輩などの関係の中で声をかけあったり情報交換をして社会は成り立っていました。いまだんだんとそうした知恵の共有がしにくくなっているなと感じています。

 ゲストのみなさん、それぞれの生きるコツや「やりくり」を伺います。働きながら子どもを持って、あるいは家庭でひとりで育児をするというときに、そういうことをしてきた先輩の話を聞くということがシェアになるんです。いろんなお話をちょっとずつ「いいとこどり」をして、自分らしく生きるヒントになりますように。

 今日は男性の中村シュフさんも交えて、男性の目線から見た「家庭」というくくりも含めて、客観的に、そして当事者として、家庭経営というものをどのように見ていらっしゃるのか、お聞きしていきます。わたしたち女性は「家庭」や「家事」を客観的な客観的な目で整理してなかったなという点もあるかもしれません。

「家庭に入ってほしい」とプロポーズされ主夫に

中村シュフ(以下、中村):「主夫芸人」で「家政アドバイザー」の中村シュフです。もともと芸人をやっていたんですが、コンビを解散したり売れなかったりで、芸人をやめようか、と悩んでいたときに「家庭に入ってもらえませんか」と奥さんからプロポーズをされまして。妻はフルタイムで働き、3歳と11ヶ月の娘2人を育てながら主夫をしています。芸人時代の先輩が面白がってくれまして、いまは「中村シュフ」としてパートで芸人をやっています。

田内しょうこ(以下、田内):出版社に勤めていたのですが、雑誌の編集部にいたころに子どもが生まれました。必死に保育園にお迎えをし、ごはんを作り、慌ただしすぎて子どもにケガをさせたりしながらも、まとめづくりや下ごしらえなどの工夫で乗り切った経験をまとめた本を出してフリーランスで料理の仕事を始めました。小6女子、小3男子の2人がいます。

ecomom編集長・村上富美(以下、村上):子どもは高1の息子と小6の女の子がいます。田内さんよりももっと前に、そのときは夜10時まで預かってくれる保育園を見つけて、そこの近くに引っ越して出産して仕事を続けてきました。夫も編集者ですので本当に周りに頼りながら、でもこちらも何とかできることはお返しするような心掛けで、なんとか子育てしてきました。ecomomに移る前には2年ほどは人事室で、いま子どもを産み始めた若い世代のための制度作りなどに関わってきました。

西田:今日は打ち合わせもなしのトークなのですが、行きあたりばったりをいかにうまくやるかということの結果を得ている方たちですよね。中村さん、芸能界って志があっても厳しいと思うのですが、売れない、この先どうなの、って時に結婚して。奥さん、男前ね。

中村:本当に助かりました(笑)。

西田:人生を他からの評価とか目に見える尺度だけじゃなくて、ふっと「もう、しょうがない」というような状況に身を預けるということがとても大事なんです。「◯◯でなければならない」「◯◯のためには、こういう段取りが必要」というように、計画的に人生を登ろうとしてしまうけれども、実は未来というのは登っていくものではなくて、未来は向こうからやってくるものだというのが私の考えなんです。

 ですから「今」を充実させたり、感謝をしたり、うんと辛いと感じるときに「お世話になって生きている」ということに気付くというようなことが大切ではないかと思うんです。未来は向こうからやって来るんだから、未来を追いかけないでいいんです。「ああなりたい、こうなりたい」「スキルアップしなきゃ」と言えば、それは利用される側に立ってしまいます。未来を作っていくコツは「預けてみましょうか」ということです。奥さんがそう言ってくれるなら、そうしてみようと客観的にね。

 ところで家政科ご出身だそうですが。

男子高校生として家庭科を受けて興味が

中村:僕が高校に入ったのが、平成7年で、「男子生徒にも家庭科を」というような転換期の、ちょうど過渡期のところで、高校入学と同時に家庭科室が新しくできました。新しい家庭科室で、男子生徒ばかりのなかで家庭科を学ぶという、ちょっと特殊な状況で。

「これからは男性が家庭科を学ぶことに、大きな意味がある時代が来るから」ということを、一所懸命お話してくれる先生がいらっしゃって。僕自身、家庭科がすごく好きだったので、その先生の言葉を真に受けて、というか、その言葉がスッと入ってきて、響いたんです。男子校に家庭科となれば、男性の教員も必要だろうし、確かに面白そうだなと。

西田:当時は本当にやるやついるの? と見られたでしょうね。

中村:もちろんです。

西田:フロンティアの人はみんなそうです。すでにある価値観をどう変えて行くか。これから中村さんがどんどん活躍して話題にのぼれば「僕も主夫に」という人が増えるんです。

中村:男性は女性の話にあんまり聞く耳を持たない方が多いんです。ところが全くおなじ内容で、僕が言うと少しは耳を貸してくださったりします。女性の話が、どうしても愚痴に聞こえてしまうような感じが男性にはあって、それがちょっと悲しいですね。僕が「家事って大変なんですよ」と言うと急に男性も「なるほど」となったりするので、それをうまいこと利用して、女性の気持ちとか、主婦の気持ちとか、男女の架け橋としてうまいこと伝えていければと思います。

 それから女性も、毎日のことである家事を、空気を吸うみたいに無意識にやっているというのもあって、そういった方々に「灯台下暗し」ですよ、一度見詰め直したらどうですかと提案したいというのもあります。それで、この本(『主夫になって初めてわかった主婦のこと』)を書かせていただいたんですけど。

西田:家事は女性のものっていう価値観にまだ縛られているところがあるんでしょうね。

中村:男性は、料理をするというと、キッチンに立ってフライパンを振って、というイメージしか持っていないことが多い。主婦からしたら料理って先ず“冷蔵庫チェック”からはじまって、“献立”を考えて、必要なら“買い出し”に行って、そして“作って”……、あと“楽しく食べる”のも家事だと僕は思ってますが、楽しく食べて、“お片付け”して、“冷蔵庫の在庫チェック”まで。こういった一連の流れが全部合わさって「料理」じゃないですか。

西田:お父さんがたまたま手伝ってくれるとメインの「鍋奉行」とかメインテーマをやって手伝ってると思っちゃう。

中村:男性のそれを「派手家事」と呼んでいるんですが、対して「地味家事」といいますか、洗い物をするとか排水口をきれいにするとか「地味家事」の連続である、ということわかってもらいたいと思っています。

西田:とても大事なことですね。次は田内さんに、手を抜くのではなくて、より豊かにする「時短」についてお話しくださいますか?

小さな積み重ねで毎日の家事は楽になる

田内:男性誌で男の料理の特集とかやっていたので、男性の派手家事や道具好きの話はよくわかります。中村さんのおっしゃる通り、「男はこれがわかってない」と男性が言うから通用するけど、女性がそれを言うとジェンダー論になってしまいます。とはいえ、いまは女性も男性と同じ。勉強して高学歴で働いて、と家事を実家で体験していない方も多いので、中村さんがおっしゃるような「主婦の段取り」が身に付いていないなと感じています。

 いわゆる昔からの知恵が伝わって来ていないんですね。わたしのお伝えしている「時短」はいわば、昔の知恵の洗い出し。小さな積み重ねで驚くほど毎日の家事はラクになります。

西田:物事を習得するには、知識だけではなく、繰り返しやっていって身につけるのが大切ですよね。

田内:基本的なパターンを身につけると時間はかかるかもしれないけれど、結果的に「段取り」がとてもラクになります。それを身につけるのは「筋トレ」と同じだと思っています。それを積み上げて行けば自分の時間を生み出すことができます。子どもさんが小さい方にとっては、自分だけの時間を持つことがもう命題、というか本当に難しいですよね。

中村:もうムリですよね。ほかの家事は時間がある程度決められる。スケジュールとか段取りとかできますけど、こと子どもに関しては、予測不可能な「イレギュラー家事」ですよね。

 育児ノイローゼとか、そうなる方って一所懸命に育児をやってて、子どもが生まれるまでは何でもある程度、段取りを組んでやれてた真面目な人だと思うんです。そこに初めてイレギュラーなものが入ってきて、自分の思い通りにならないことですごく不安定になってしまうことがあると思うんです。

後編では「シュフ力を家族でシェアしていこう!」「家族や職場のハッピーのためにまずは自分がハッピーになろう!」などなどをテーマに、お話の続きをお伝えします。お楽しみに。

西田陽光
一般社団法人次世代社会研究機構代表理事。政策シンクタンク「構想日本」の立ち上げメンバー。男性の家庭参画推進の数々の啓蒙推進企画を実施。2013年一般社団法人次世代社会研究機構代表理事に就任。2014年「特別養子縁組推進キャンペーン」を日本財団と行う。子育てパパママ支援企画・女性支援企画を数々開催。

中村シュフ
1979年、埼玉県生まれ。主夫芸人・家政アドバイザー。大学では家政学を専攻、家庭科と保健の教員免許を取得。「M-1グランプリ2006」で準決勝に進出。その後、結婚を機に家庭に入り、現在2児のパパ。初の著書『主夫になってはじめてわかった主婦のこと』(猿江商會)が発売中。

田内しょうこ
料理研究家。米カリフォルニア州のミルズ女子大を卒業後、雑誌編集者を経て、料理の道へ。執筆・翻訳も手がける。1男1女の母。著書に『働くおうちの親子ごはん』(英治出版)『時短料理のきほん』(草思社)ほか。

村上富美
ecomom編集長。立命館大学法学部政治学科卒業。在学中、中国に留学。新聞社記者、イギリス滞在を経て、日経BP社に入社。日経ビジネス編集委員、リアルシンプルジャパン副編集長などを経て現職。人事室で女性活用推進の業務を担当した経験も。一男一女の母。

▲ページTOPへ