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『家事・仕事・人生のやりくり』トークショー(後編)

(2015/10/10)

ecomomサイトのコラムニストでもある田内しょうこさん、主夫芸人の中村シュフさん、そしてecomom編集長の村上の3人が、家事の段取りや、子育てについて語り合ったトークショー。その後編をお送りします。
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西田:「段取り」というのを習得するためには、なんどもやってみないと経験として蓄積されない。身体が洞察するものの把握力と、それからやってみるという筋力運動がセットでないと、再現できないところがあるんですね。色んな意味での「体を作る」というのはすごく大事じゃないですか?

田内:例えば洗濯って、割と流れでできる家事なんです。朝、洗濯機をセットして、粗い終わったら、隙間の時間にちょっと干して。でも同じように、料理を流れで考えて、隙間に少しずつやっている方は意外と少ない。

 料理だってよくよく考えてみると「切る」、ちょっと「塩しておく」、「献立を決める」、「買い出しする」など、いろんな作業、パーツに分けることができるんです。そのパーツひとつ、ちょっとやっておくだけで、実はものすごく料理が楽になる。

 例えば、スライサーを使って、1分2分のちょっとのすき間にキュウリの薄切りを準備して塩もみしておけば、夜はしらすを混ぜれば一鉢になる。自分の準備しておいたもので、一品でも余分にできたら「あ、できた!」って、自分の幸せ感を積み重ねることができるんです。小さな幸せですけど(笑)。

中村:子どもにかける時間、イレギュラーなものに対応する時間と、心の余裕を生み出すために、普段やっている家事を時短にしてみたり、あとは先ほど言った「献立を考える」のも、旦那さんに「今日の献立、なにがいい?」と聞いてみたりですね。

 でもそんな時に「うーん、なんでもいいよ」って、これが一番キツいですね(笑)。例えばそこで「肉がいい」「魚がいい」と言ってくれたら、「考える5秒」がなくなる。そこで生まれる余裕が育児という非常に大変な家事、大変イレギュラーなものに対応できる状況を生み出すんじゃないかと思います。

段取りを明文化すると家族も手伝いやすくなる

田内:「段取り」ってタイムスケジュールの「フローチャート」とイコールだと思っているんです。段取りをきちんと明文化することによって、旦那さんや子どもも「手伝い」がしやすくなると思ってます。なんとなく自分の流れでやっていると「ちょっと手伝おうか」と言われたことが流れを乱されたという気持ちになってしまうんですけど、それを頭のなかでパーツに分けておけば、「じゃあそこはお願い」と、みんな気持よく仕事がシェアできる。

中村:僕の芸名は「シュフ」と書きますが、性別的な役割や未婚・既婚を分けてしまうことを避けたかった、というのがあります。「シュフ」いうのは、人間の持つ能力のひとつだと思っていて、男性でも子供でも、家事に携わる力のことカタカナで「シュフ」と表すイメージですね。みんなが持っている「シュフ」の力をちょっとずつ発揮して……、家庭での家事を子供もお父さんもお母さんも各々の「シュフ」という力で、「今日はお母さん8出すから、子供とお父さんで1ずつ出して、10で家庭のシュフを賄っていこうね」というふうに進むとよいですよね。

西田:村上さんはご自身の人生でのいろいろなご経験のなかでのやりくり。ちょっと個人的な経験から教えていただけますか?

村上:私は出版社に勤務していますが、以前はマスコミと言うと、夜型の男社会で、私自身も大学卒業以来、そういうものかと思っていまして(笑)。子どもが生まれて育児休暇から戻るとき、22時まで見てくれる保育園を見つけて入れました。毎日遅かったわけではありませんが、締め切り前などは、一度帰って、子供を寝かしつけてから、また深夜の会議に加わるとか、そういうこともやってきました。

 でも、自分でもかなり無理があると感じていましたし、人には勧められません。最近は私が勤務する会社も20代30代は女性比率が半分程度に上がって、働きながら子育てをすることが普通になり、働き方が変わってきました。

「育休」を取る男性社員も現れています。当初、社内には「男が育休取るのか?」という驚きも当然あったんですが、今では「世の中はもうこういうふうに変わってるんだな」と受け入れている感じです。最近は、育休を取得する男性社員がいると、育児に協力的な会社として若者にアピールできるという面もあります。若手が行動で示すことで、上の世代も変わっていっていると思います。

西田:ご自身が働きながら、子育てしながら、編集や人事のお仕事をされて、人事の在り方という点で、会社の側に立つ、また雇用される側に立つ、その辺のギャップをどういう風に、自分もその当事者として改善していったのでしょう。

ママ自身がハッピーでいることが大切

村上:やっぱり、人材を育てる場合は、長期の目で見ることも大切だと感じました。すべての企業ではないですが、もともと日本企業は社内で人を育てることを大事にするという傾向があると思います。それが日本企業のよいところでもあると思うのですが。

 会社としても、今は子育て中の社員向けに時短勤務制度などを作っています。子どもが小さい間は時短制などを利用して子育てし、可能な状況になったら、フルタイムに戻してで貢献してくれればいい、という見方をしているところも多いと思います。

 一方で社員の側も、子供が小さい間は――小さい間と言っても、実は小学校入学の頃が一番大変なんじゃないかと私は思うんですけど――やっぱり「自分のできる範囲は今はここまでですが、自分としてはこんなふうにキャリアを作っていきます」というビジョンを会社に示すことも必要だと思います。

 企業は利益を上げなければなりませんし、半期ごとに成果を評価するといった制度を持つところも多いです。そんなときは子どものいない、フルに働ける社員と自分を比較してしまうこともあると思いますが、子育て中は、少し別の視点で働き方を考えてみてもいいのでは。もしかしたら北欧とかは、社会のなかでそれを許容しているというか、もっと大きな仕組みのなかで動いているんじゃないかと思うんですけど。

 語弊があるかもしれませんが、企業のなかにもちょっとだけ余裕の部分があってもいいんじゃないかと思ってます。もちろん育児中でも、時短勤務をしても、効率や利益を追うことは必要です。でも、「私は子どもがいるから残業できない、申し訳ない」などと、すごく真面目に思いつめると、ママ自身がつらくなります。なので一番大事なのは、ママ自身がハッピーでいること。それが子どもを含め、家族がハッピーでいることにつながる、と思っています。

 残業はできないけれど、効率的に働こうと努力している自分を受け入れることも大切です。「子育ても仕事もしなきゃいけない」と思っていると、どうしても自分のことを後回しにしてできない部分に目を向けがちです。けれど、ママもひとりの人間として、プレッシャーよりもやりがいを感じて生きていることが、一番大切だと思います。後輩社員にも、そう伝えているつもりなんです。それは利益を追求する会社の方針にも、結果的には反していないと私は思っています。

西田:エコマムという媒体をもたれて、家庭で培った「段取り」や「やりくり」がどのように反映されているのでしょう。

 子育てママは本当に、あれこれ本当に忙しい。そんなマジシャンのような暮らしを日々こなしていく「やりくり」のなかで、夜中までどっぷり時間が使えた独身のときの仕事の在り方と、どうしても制限されたなかでやらざるを得ないなかで身に付けたところや、仕事や取材のときの物の見方に反映されているところをちょっと教えてくださいますか?

村上:お休みの日に、自分が家で家事をするときには、炊飯器がとりあえずセットされている、全自動洗濯機が動いている、食器洗い機が動いているときに掃除機をかけている…… という4つくらいの家事が同時進行しているような状況になると「やった」という達成感を得られる感じでしょうか(笑)。

 一方で、お料理などは、冷蔵庫のなかで、昆布やいりこなどで水から出汁を作っておくとか、そういうことを大事にしている部分もあります。お惣菜などを買ってきて食べさせることも、もちろんあるんですけど。

 でも外で買ってきたものがおいしかったら、次回は、子どもたちと、あのサラダを家で再現するためにはどうしたらいいか考えてみようと、マヨネーズにちょっとヨーグルト足してみようかとか、一緒に作ったりすることもあります。

 やっぱり一緒にご飯を食べることは大事だと思います。団欒のひとときというか、きちんと顔を見て笑顔で「おやすみなさい」とか「今日のご飯おいしかった」とか、「学校でこんなことがあったよ」という時間は作らないと、と思っています。不器用で仕事が遅いので、そう思っていても、実際できないことも多いのですが。希望は、家事は時短でも、子どもとの時間はできるだけとりたいと思っています。

ママ同士などリアルな人間関係を大切に

西田:いろんな人達が、それぞれいろんな問題や、その人の持つ環境に対応するために創意工夫ををするなかで、経験というのは生まれます。そういう経験をシェアする場が、地域であったりしますよね。

村上:ママ友というのは、本当に、すごく大事だと思ってます。勤めていると、なかなかママネットワークができないという声も聞聞きます。でも、後輩には「可能ならば半休を取ってでも、PTAの会合やママ会のランチには行ってみたら」と言っています。私から見て、ママたちは経験と知恵の素晴らしい塊で、学校だけでなく、地域の子育ての情報、さまざまな知恵をシェアできると思います。実は、孤独を感じているママが意外と多いのかな、ということが非常に気になっていまして、ぜひリアルなママ友との絆を大切にしてほしいですね。

田内:(子供が)大きくなればなるほど必要ですよね。

西田:例えばネット上でも会話ができるようには、なっているんですけど、やっぱりコミュニケーションの基本やリアルだと思うんです。ですからこういう場で語り合った、いろんなやり方、あり方は正解というものはない。どれが正しいじゃなく、自分を前に進める情報として「いいとこ取り」をして知恵にしていただけると嬉しく思います。

西田陽光
一般社団法人次世代社会研究機構代表理事。政策シンクタンク「構想日本」の立ち上げメンバー。男性の家庭参画推進の数々の啓蒙推進企画を実施。2013年一般社団法人次世代社会研究機構代表理事に就任。2014年「特別養子縁組推進キャンペーン」を日本財団と行う。子育てパパママ支援企画・女性支援企画を数々開催。

中村シュフ
1979年、埼玉県生まれ。主夫芸人・家政アドバイザー。大学では家政学を専攻、家庭科と保健の教員免許を取得。「M-1グランプリ2006」で準決勝に進出。その後、結婚を機に家庭に入り、現在2児のパパ。初の著書『主夫になってはじめてわかった主婦のこと』(猿江商會)が発売中。

田内しょうこ
料理研究家。米カリフォルニア州のミルズ女子大を卒業後、雑誌編集者を経て、料理の道へ。執筆・翻訳も手がける。1男1女の母。著書に『働くおうちの親子ごはん』(英治出版)『時短料理のきほん』(草思社)ほか。

村上富美
ecomom編集長。立命館大学法学部政治学科卒業。在学中、中国に留学。新聞社記者、イギリス滞在を経て、日経BP社に入社。日経ビジネス編集委員、リアルシンプルジャパン副編集長などを経て現職。人事室で女性活用推進の業務を担当した経験も。一男一女の母。

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